2016年10月20日木曜日

年代順バカラシール BACCARAT STICKERS CHRONOLOGICAL

以前、年代別バカラマークについて纏めたページのアクセス数が多いので、気を良くして色々あるシールも画像が入手できた範囲で年代順に纏めてみました。

とはいっても日本語で言うシールつまり英語で言うステッカーはブランドの保証のためのファクトリーマークとは異なり、どちらかというとパッケージデザインの一部。
そのため正確な年代を明記した資料も全くありませんし、こうしてまとめるのももしかしたら私が最初かもしれません。

ですので年代順といっても、グラフィックやパッケージデザイナーの頭の中を想像して、時代とともにこんな風に変遷したのだろうという推測の元で並べています。万一間違えにお気付きの方はご指摘いただければ幸甚です。
またもしも他にも異なる種類のシールをお持ちの方がいましたら、画像をお送りいただければ、追加掲載させていただきます。





最も古いのはこれ。
1862 - 1936年の間これはブランドの保証のためのファクトリーマークでした。
現在マークのない物はこのシールが貼られていたと解釈されています。
底裏に貼られていました。


同様にファクトリーマークとしてのシールでも比較新しいものには
こういうヴァージョンもあります。
これも底裏に貼られていました。





これ以降のシールは全て品物の正面に貼られています。
これは非常に珍しいシールです。
本社のあるバカラ町の紋章が図案化されています。
フランスの地方のオークションハウスで1930年代くらいのバカラ製品が多数売りに出たときにそのうち半数以上にこのシールが付いていました。




この四辺形のシール、グレー、黒、金とヴァリエーションがあります。グレーが最も古いのではと推測します。


何故かというと、次の長方形のシールに移行する際に金地に黒字なので、その前のこの非平行四辺形の中で最も新し物は金地に黒。
だとすると金地に黒の前はグレーと考えるより、黒地に金と考えるのが普通でしょう。








長方形のシールに移行する前最後の、非平行四辺形のシール。







最初の長方形のシール。
現在のシールに似てきます。
金色でバカラのトレードマーク(商標)も入っています。






白地に赤縁のシール。
初期のものにはバカラのトレードマークが入ってます。







その後バカラのトレードマーク(商標)はなくなり、白地に赤縁だけのシンプルなシールになります。








こちらが最新?でしょうか。
すみません新しいもののことはよく知りません。
縁がなくなり角が丸くなり、赤地に白のロゴが上半分に施されています。








以前バカラ品はシールは付いているものと付いていないものがあるのは何故かというネット上での議論を見かけたことがありますが、私は美学の問題だと思います。
6客セットの箱の蓋を開けたら6客全てにシールが貼られていたら、美観的を損ない品もよくない、と思うのです。



それから、こちらの二つのシールですがたまにヨーロッパのネットーオークション等でこのシールが付いているからバカラ製品だと偽って売っているセラーを見かけます。
よく見るとTONY HENRY  BACCARATと書いてあります。
TONY HENRY  というのはバカラ町にあるクリスタルのお店です。
つまり『バカラ町のTONY HENRY店』のシールです。
バカラ公式サイトのブティックリストにも載っている公式取扱店でもあるのでバカラ製品も売っていますが、他社製品も扱っているので、このシール付き=バカラ製品ではありませんからくれぐれもご注意下さい。



こちらのシールもBACCARAT『バカラ町のCRISTAUX店』のシールです。
本社のあるバカラ町の紋章が図案化されています。








バカラの本社のあるバカラ町の紋章はこちらです。
グラスが図案に使われていますがこの紋章のほうがバカラ社より新しいのでしょうか?








2016年9月22日木曜日

バカラ ロザンジュ BACCARAT LOSANGE

Photo: Courtesy Baccarat 

1930年リリースのこのモデル、ジョルジュ・シュバリエのデザインです。
今年(2016年)100点限定でリエディション(リバイバル製造)されましたでお知らせも兼ねてモデル紹介です。

専門書には頻繁に登場する品ですが、オリジナルの1930年代の品も製造数が少なかったのかコレクター歴の長い私でも売りに出ているのを見たことは一度もなく、所謂幻の名作、ミュージアムピースでした。

意匠的には本体の形状もカットも菱形、透明ガラスに色ガラスを被せそれをまた菱形にカットして、1920年代的なデコラティブな部分と1930年代的なモダンな部分とを両方持ち合わせた、ハイブリッドなデザインが魅力です。

私も入手したわけではなく、バカラのプレス提供の写真にてモデルのみのご紹介になります。ご購入に興味のある方は、限定100点でバカラ公式ショップでお取り寄せ、お求め頂けると思います。

Photo: Courtesy Baccarat 


名前の由来;
Losangeとはフランス語で菱形の意。ダイヤモンドまたはトランプの絵柄のダイヤという意味もあります。
このモデルは形状もカットも菱形でそのものズバリという感じ。わかりやすいですね。
バカラの商品名にしては珍しく捻りがなくストレートすぎて拍子抜け。これではブログが成り立たなくて困ります。。。

1930年ごろ菱形が流行していたか等調べてみましたが、ネット検索程度では幾つか菱形のジュエリーがヒットして来た程度です。


写真はアンティーク、ビンテージジュエリーサイトhttp://www.bijoux-bijouterie.comより



菱形、ロザンジュに関し他に何を書いていいものか少し悩みましたが、個人的には菱形というと、最初に思い出すのが巨匠パブロ・ピカソの「アルルルカン姿のパウロ」。自分の息子ポールを描いた名作なので、この絵に関して少し書くことにします。

シャイな感じのパウロの空を見つめる表情と道化の菱形模様のアルルルカン(仏語)アルレッキーノ(伊語*1)の服装のコントラストが印象的です。
1924年の作でパリのピカソ美術館所蔵。

Pablo Picasso,
Paul en Arlequin, 1924,
Huile sur toile, 130 x 97,5 cm
Dation 1979, MP83
© Succession Picasso
Cliché : RMN-Grand Palais (Musée Picasso – Paris) / Jean-Gilles Berizzi



ピカソは1917年、当時若きジャン・コクトーなどの未来派アーティストと知り合い、セルゲイ・ディアギレフが主宰するバレエ団バレエ・リュス(Ballets Russes)のために舞台装置や舞台衣装などを手がけます。

少し話が逸れますが、ディアギレフのバレエ・リュスは作曲家で言えばエリック・サティやストラヴィンスキー、プロコフィエフ、美術家ではピカソ、コクトーの他マティスやデ・キリコなどの当時きって前衛芸術家が協力する斬新な総合芸術で、後の舞台芸術全般に極めて大きな影響を与えます


初期のバレエ・リュスの舞台
画像はビデオDiaghilev and the Ballets Russes」(英語)より


ピカソにとってはこの劇場関連の仕事経験がイタリア発祥のコメディア・デッラルテ、更にはイタリア美術への造詣を深めるきっかけとなり、1900年代初頭に傾倒したキュビズムに距離を取りはじめ、1918年頃から絵画ではこのようなネオ・クラッシック的な作品を制作しはじめたと言われています。

ピカソはそのバレエ団のバレリーナのオルガ・コクローヴァと2018年に結婚。1921年にはこの絵のモデル、第一子のパウロ、をもうけます。

そういう様々な経緯を考えると、昔、初めてこの絵画を見たときに不思議に思った、幼少のパウロアルルカン姿も納得がいきます。



とはいえピカソはアルルカン姿が好きだったようで、このパウロ以外にもアルルカン姿の人を具象や抽象で様々に描いています。
全てピカソの作品で左から:
Acróbata y joven arlequín(アクロバット師と若いアルルカン)1905年作
Arlequín (ハーレクイン / アルルカン)1915年作 MOMA ニューヨーク近代美術館所蔵
Arlequin, Les Mains Croisee(手を交差させるアルルカン)1923年作
L'Arlequin assis(座るアルルカン)1923年作 


でももちろん、ジョルジュ・シュバリエがアルルカンからインスピレーションを得たという話ではなく、ロザンジュ(菱形)とう言葉から今回は私の勝手な連想でピカソの絵のお話になりました。

ヨーロッパの流行という観点では1920年代と1930年代がらりとスタイルが変わるのです。
この点に関してご興味のある方はLIDOリドの項目などもご覧ください。




ピカソの妻でポールの母バレリーナ、オルガ・コクローヴァ


コメディア・デッラルテ



(*1 日本語版ウィキペディアより)
アルレッキーノ (Arlecchino) はイタリアの即興喜劇コメディア・デラルテ中のキャラクターの一つで、トリックスター。ひし形の模様のついた衣裳で全身を包み、ずる賢く、人気者として登場することが多い。国によっては、アルルカン(: Arlequin)、ハーレクイン(: Harlequin)とも呼ばれる。欧米では道化役者の代名詞となっており、芸術作品の中では、ピカソの「アルルカン」、チャップリンの「ライムライト」、ロベルト・ベニーニの映画「ピノッキオ」のマリオネット、アンデルセンの短編小説集「絵のない絵本」の第十六夜、ブゾーニオペラ「アルレッキーノ」などに登場する。

2016年7月7日木曜日

アンティークバカラ ラ・シェス BACCARAT LA SIESTE, FEMME DANS UN HAMAC

Photo©Patrick Schuttler
Courtesy: Baccarat 



ついに入手しました!ラ・シェス。

前回ジョルジュ・シュバリエの代表作の中の代表作Jets d’Eau ジェ・ドーをご紹介しましたが、もう一つの代表作と言えばやはり1929年リリースのこのラ・シェス ”La   Sieste ”(お昼寝の意)別名 ”Femme dans un hamac”(ハンモックの女性の意)とも呼ばれているアイスバケットです。

南国の海辺で椰子木にかかったハンモックで眠る女性の、溶けるような滑らかなラインが印象的です。

本来の用途ははアイスバケットですが花瓶などにも使用できそうです。

Jets d’Eau ジェ・ドーと並んで数あるバカラの専門書でもほとんど全てに掲載されている程バカラの歴史上重要なピースです。Jets d’Eau ジェ・ドーのようにリバイバル生産もしていないため、コレクター歴の長い私でさえ売りに出されているのを今回初めて見つけました。長い間憧れだった秀作です。

値段がつけられないので今のところ転売の予定はありません。
今回はモデルのご紹介のみになります。


入手した品物が到着しましたが、エッチングが絵画のようにデリケートで窓の反射とかか入ると好ましくなく、まだの写真がうまく取れないのでブログにはバカラ提供の写真を使用しています。



バカラ専門書に掲載される ラ・シェス


タイトルについて:
タイトルはそのもズバリ。なので由来説明の必要はないでしょう。
そこでLA SIESTE、お昼寝というテーマで著名アーティストがどんな作品を残しているかすこし調べてみました。
ハンモックの女性というテーマでも調べたのですがあまり好きな絵画が見つからなかったのでそちらは省略しLA SIESTE、お昼寝というタイトルの作品のみご紹介することにします。

特にマティスは同じタイトルで素敵な作品を複数残しています。

La Sieste (1905)
Henri Matisse


Intérieur à Nice, la sieste (1922)
Centre Pompidou, Paris 所蔵
legs de Mme Frédéric Lung en 1961 © Succession H. Matisse


La Sieste (1938)
Henri Matisse


こちらはゴーギャン
The Siesta (1892–94)
Paul Gauguin 
Metropolitan Museum, New York 所蔵


他知名度はあまり高くないですがスペイン人画家ホアキン・ソローヤのこの作品個人的に好きです。
La Siesta (1911)
Joaquín Sorolla
Museo Sorolla, Madrid所蔵


ゴッホの農民の昼寝を描いたこの作品は有名。
The Siesta (1890)
Vincent Van Goch
Musee d’Orsay, Paris 所蔵


ピカソも2作。13年でこんなに作風が変わります。
La Sieste
Pablo Picasso (1919)
こうして続けて見てみるとピカソのこの作品は前出のゴッホの名作のピカソの再解釈なのかもしれないな、と思ってしまいました。
ピカソは他にもべラスケスの名画の「自分ならこう描く」という再解釈などもしているのは有名です。


La Sieste
Pablo Picasso (1932)




2016年5月1日日曜日

アンティークバカラ  ジェ・ドー  BACCARAT JETS D'EAU

Jets d’Eau ジェ・ドーと名のついたこのモデルはジョルジュ・シュバリエの代表作の中の代表作。1925年のパリ万博(通称アールデコ博)に出展されアールデコをアールデコならしめたとも言える名作です。

数あるバカラの専門書でもほとんど全てに掲載されている程バカラの歴史上重要なピースで、高級クリスタルメーカー他社をクリエイティビティで大きく引き離し、バカラを時代の主役とならしめた作品でもあり、同時に1916年にバカラに入社し当時弱冠31歳のジョルジュ・シュバリエのバカラ社内外での評価を不動のものにした作品とも言え、長い間ずっと憧れだった神話的グラスです

1925年発表ですが、オリジナルは幻のミュージアム・ピースでミュージアム以外で見たことはありません。復刻版は1991年頃にリバイバルで生産されました。こちらも大変希少でとても高価です。

今回の入手は小さめのワイングラス。美しく、また想像通り満足度が高い逸品です。
やはりバカラ・ファン、シュバリエ・ファンは1つ持っていたいアイテムですね。





下の白背景の写真はバカラ・イタリアのプレスオフィスから使用許可を頂いた美しい公式写真です。

今回の入手写真中央のワイングラスS (H15.5cm)は私のコレクション用ですが、写真左端のウォーターグラス(H20.6cm)この写真にはないシャンパンフルート(H20cm)の2タイプは複数お取り寄せも可能です。

ご興味のある方はメールにてご連絡ください。ご相談に応じます。


Photo©Patrick Schuttler
Courtesy: Baccarat 




バカラ専門書に掲載されるジェ・ドー


ジョルジュ・シュバリエ
Courtesy: Baccarat





オリジナルと 復刻版の違い


• ベースのお花模様がオリジナルではレリーフで段差が付いていますが復刻版はエッチングです。
• また、オリジナルはステムのレリーフ部のみが腐食されていますが復刻版はステム全体が腐食されています。

• 写真資料を見る限りオリジナルのシャンパングラスはクープ型ですが復刻版はフルートグラスです。




名前の由来:
Jets d’Eau の言葉の意味を直訳すると水のジェットという意味で「大噴水」を意味します。フランス語には泉という意味も持つ噴水という意味でFontanieという言葉があり小さめの噴水にはFontanieを使う方が一般的な様です。代表的な大噴水Jets d’Eau はスイス、ジュネーブのレマン湖から吹き出す140mの高さの噴水が有名です。1886年建設当時は高さは30mだったそうですが当時としては画期的でした。

1886年建設当時ジュネーブのレマン湖の大噴水 Jets d’Eau

このモデルのオリジナルが発表された1925年のアールデコ万博には、バカラはクリストフルとの共同パビリオンで出展していました。

バカラ・クリストフル パビリオン

資料を見ると館内中央にはやはりジェ・ドー(大噴水)がモチーフの大シャンデリアが展示され、その下の大テーブルにこのグラスが並んでいます。

バカラ・クリストフル パビリオン内部
Courtesy: Lourve Library, Paris


Courtesy: Baccarat

バカラ・クリストフル パビリオン内部に輝く、
同じくジェ・ドー(大噴水)と名のついた大シャンデリア



晩年のジョルジュ・シュバリエ

Photo : Courtesy Baccarat





このグラスがデザインされた1925年頃、ジェ・ドー(大噴水)をモチーフにしたデザインが大流行していたようで色々なアイテムの意匠に使われています。

ジェ・ドー(大噴水)がモチーフのルネ・ラリックによるウォールランプ 1925年



ジェ・ドー(大噴水)がモチーフのダイヤをちりばめたブローチ 1925年




ジェ・ドー(大噴水)がモチーフのテキスタイル1925年 
ニューヨーク Smithsonian Design Museum 所蔵