2018年9月19日水曜日

アンティークバカラ ジェッダ BACCARAT DJEDDAH






©Galleria Kajorica





スリムなシェイプと夢想的なエッチングが素敵で大人気のモデル。
ロングステムをレイラ、ショートステムをジェッダと言います。
希少品で、私が提供したい価格で売るには値段が高すぎることが多く、グラスは転売用に入手出来たことがありません。写真は唯一入手でき、すぐに売れてしまったデキャンタ。
ですので今のところ名前の由来の記述のみとなります。



1933年のバカラカタログから



名前の由来
Djeddahはジェッダのフランス語表記で英語表記はJeddah発音はジッダまたはジェッダ。このころのバカラの品にイスラム圏の街の名が多く付けられているのは、具象画を描くような西欧の従来のエッチングパターンから全面に施す細かなエッチングに移行した際に、イスラム文化の装飾にインスピレーションを得ていたからでは、と私は想像しています。

ジェッダ旧市街の家のドア ビデオ「Old  Jeddah」から

ジェッダはサウジアラビア西部紅海に臨む、首都リヤドに次ぐ大都市で、イスタンブール、カイロ、カサブランカ、リデジャネイロ 、ナポリなど多くの国際的大都市と姉妹都市になっています。

1938年のジェッダ バカラの製品名になった頃、ということになります。


もともとは紀元前5世紀頃からある小さな漁村だったのが、イスラム教が興って近郊のマッカ(メッカ)が聖地になると、巡礼者の中継地点として栄えるようになったといいます。現在では、ハッジ(大巡礼)の時期になると毎年200万人ものイスラム教徒が、ジェッダを経由してマッカへ巡礼するため、伝統的にジェッダ港に船で訪れる人たちだけでなく空港も巡礼者を乗せた飛行機が押し寄せる町となりました。
メッカの玄関口としての歴史地区は、2014年にUNESCO世界遺産リストに登録されています。


ジェッダの町の名の由来には二通りの説明があります。一つは、紅海に面する港であることから海岸を意味するشاطئ(発音はジャダー)名が付けられたという説と、もうひとつより一般的な説はアラビア語で「おばあさん」という意味の「jaddah」から転じたというも。この説の背後には、ジェッダに人類の祖であるイヴの墓とされる墳墓があるため。そのイブの墓に、巡礼者たちの中にイスラムの伝統を破ってその墓にも拝礼する者がいたことが問題となり、1975年に政府の宗教局によりコンクリートで覆われてしまったとのこと。

1924年頃のジェッダ(左) と 現在のジェッダのスカイライン(右)


UNESCO世界遺産のジェッダの旧市街の街並み
以下のYOUTUBE のリンク「Old  Jeddah」から素敵な画像をいくつか選んでみました。
https://www.youtube.com/watch?v=xIai_j-fkSI


現存の街並みは800年以上前のものだそうですが繊細な装飾の細工を施した窓が印象的で神秘的な街です。
これらの写真を見て製品名と実物のイメージがやっと少し結びつきました。。。














2018年9月4日火曜日

ポートワイン(デザートワイン)グラスの使い方 Verres à vin de Porto


ポートワイングラス。
満水容量80mlくらいの小さなグラスのことをフランスではこう呼ぶのが一般的なようです。
満水で80mlですからリキュールにはやや大きすぎ白ワインには小さ過ぎ。

アールデコ期のショートステム、ノーステムですと日本酒の冷酒向けにお求めになる方が大半だと思います。

一方ロングステムのグラスの場合、どのように使っていいのか判らないという方も少なくないのでは、と思います。





私の住んでるイタリアではこのサイズのグラスは食事の最後のチーズか食後のお菓子に合わせていただく甘味の強くアルコール度の高いワインに使用されるのが一般的で、以前は勝手にイタリア語のVino da Dessert (デザート用のワイン)からデザートワイングラスと呼んでいました。
おつまみを食べながらお酒を延々呑み続ける日本ではデザートワインというのはあまり親しみがないかもしれません。

このサイズのグラスはフランスだとポートワイン用、食前酒用、たまに食後酒用などと言われて売られていて、ますます混乱してしまいます。
タリアではポートワインは食後酒としていただき、食前に飲むことはまずありません。

そこでフランス映画で少しお勉強してみました。





写真は映画「ブルジョワジーの密かな愉しみ」(Le charme discret de la bourgeoisie ルイス・ブニュエル監督 1972年)陸軍大佐宅のディナー着席前の立食で食前酒を飲む場面で主人公の一人が「ポートワインをワンフィンガー」と注文します。濃い紫色のワンピースを着ている女性が持っているのがポートワイングラスです。
この場面でポートワインを食前酒として飲むこともあるんだ、と目鱗でした。
地理的にこんなに近くても食文化やそれに伴う小道具の用途も随分異なるのですね。


それから映画「ムリュエル」(アラン・レネ監督 1963年)では

長い間会っていなかった昔の恋人を家に招待するシーンでやはりディナー着席前に居間で食前酒をサービズする場面。ワゴンには数種の食前酒が乗っています。ラベルが読み取れるのはチンザノだけですが、なるほどマルティーニやチンザノ、ズッカなどならこのサイズのグラスで飲むのも良いかもしれません。
マルティーニやチンザノの発祥地イタリアでは、普通もっと素っ気ないグラスで飲みますが。。。






この映画、Boulogna sur Mer というフランス北西の港町が舞台です。インテリアを見ると極めて庶民的な住環境ですが男性が昔の恋人に「 君は昔と変わらないね。クリスタル僕も大好きだ。」と彼女がテーブルにセッティングしたワイングラスを褒め、指で弾いて響きを楽しむ場面があります。暮らしのクオリティーにクリスタルのテーブルウエェアはとても大切なことがわかります。




ちなみにこのサイズのグラスに良いワイン。ポートワインはもちろん、イタリアワインならPassito(パッシート)やフランスのSauternes(ソーテルヌ)など、甘みとアルコール度がやや高いワインが良いでしょう。

日本人のお酒好きは往々にして「甘い酒なんて飲まない」とおっしゃる方が多いですが、この種の甘めのワインは決してお酒の苦手な女性向きに甘くしてある邪道なワインではなく、ワイン通の甘さです。コーディネートする食材によっては素晴らしいハーモニーになるので是非機会のあるときにお試しください。





左はソーテルヌ
右は大好きなHauer のパッシート。シチリア州のリパリ島で作られています。


Photo: Franco di Filippo
パッシートワインの葡萄はこのくらいになるまで収穫を待ちます。


さて、ポートワインについてですが、イタリアのパッシートワインが葡萄を干からびるとまでいかなくても、しおれるまで収穫を待つ以外、その後の清酒工程は普通のワインと変わらないの比べ、ポートワインは糖分が残っている発酵途中にアルコール度数77度のブランデーを加えて酵母の働きを止めるのが特徴だそうです。


その昔フランスと戦争が多かったイギリスが美味しいワインをフランスから輸入できず、ポルトガルから購入するにあたり、長時間船に揺られても味の落ちないワインとして開発されたのだのだそうです。


大分前ですが、ポートワインの本場ポルトに行ったことがあります。町の中心部から川を挟んだ対岸にワイナリーがたくさんあって試飲させてくれます。毎日午後になると試飲のためワイナリー巡りをしました。色々試飲した中で私的に一番気に入ったのはQUINTA DO NOVALキンタ・ド・ノバルのヴィンテージワインでした。ヴィンテージは毎年製造されるのではなく、特に葡萄の質が良かった年にのみつくられるのだそう。

そのときはヴィンテージボトルを1本買ってきて何年後かのお誕生日に開けていただきました。余談ですが、その翌年の誕生日の数日前にアパートの地下のセラーに泥棒が入りセラーに蓄えていた高級ワイン各種全て盗まれてしまいました。楽しみは後に、なんて言ってないで全部飲んでおけばよかった、、、と後悔。。。。その後は出来るだけ早めに開栓する口実を見つけるようにしています。

QUINTA DO NOVALキンタ・ド・ノバルのポートワイン

Photo: Paula Santos
ポルトの街


2018年6月26日火曜日

アンティーク バカラ エグランチエ ローズ トワレセット BACCARAT E’GLANTIER

2020年11月11日更新


1900年前後に製造されていたバカラのトワレセットで数あるアールヌーボー期のトワレセットの中でも、カメオガラスと呼ばれる大変凝った意匠と技法で制作された豪華なアイテムです。
カメオガラスというとエミール・ガレなどの作品が有名ですが、バカラのカメオガラス製品はガレのような手彫りではなくアシッド・エッチングにて掘っていて、エッチングの地紋のテクスチャーが入ります。
ちなみにバカラは1880年代よりこのアシッド・エッチングを用いたカメオガラス製品を発表しています。


置いておくだけでその周りが一つの世界を作ってしまうような品で、非常に希少であることから現在も高額で取引されている品であることも納得できてしまいます。。

透明ガラスの上に色ガラスを被せ、色ガラスを掘るいわゆるカメオガラス技法で、野ばらの一種「犬バラ」の柄が描かれていて、一般的にE’GLANTIER ROSE  エグランチエ ローズ (エグランティェ ローズ)と呼ばれています。カタログに掲載された正式名称はE’GLANTIER  エグランチエ でローズは入りません。











実はこの手彫りではなくアシッド・エッチングにて掘るカメオグラスのことをイタリアでは falso cameo「偽カメオ」と呼びます。「偽」って聞こえが悪いですが本当のカメオグラスって?と調べてみましたら、エミールガレなどより1700年も先に作られたとされるカメオグラスがイタリアポンペイで発掘されています。

素晴らしいですね。これが本物カメオグラスならくアシッド・エッチングで掘る工業化されたカメオグラスは 「偽カメオ」仕方ないかもしれません。。。

ナポリ考古学博物館所蔵
青のカメオグラス
想定制作年 紀元1世紀頃


名前の由来

エグランティェローズ (E’GLANTIER ROSE)とは一般的に犬バラ、ローザ・カニーナ(犬のバラの意)とも呼ばれるバラの原種の一つ。夜間に香りが強くなるといいます。



ゲーテの詩の「野ばら」のモデルにもなっています。
ゲーテの詩の「野ばら」は多くの作曲家が曲をつけていますが、中でも有名なシューベルトの曲。


シューベルトの「野ばら」の楽譜


ところでなぜ犬バラ、犬のバラと呼ばれるかに関しては栽培種のバラと比べて価値 が低いという説と、古代ローマ帝国の賢者プリニオ老が狂犬病の治療に有効としていたためと言われていますが、その効能については真偽のほどは定かではありません。

何れにしてもバカラのトワレセットの中でも最も高級なラグジュアリーラインであったこの商品のデコレーションの意匠がゴージャスな大輪のバラではなく、素朴で見逃してしまいそうな野ばらであるというのも面白いと思います。

犬バラの果実ローズヒップははビタミンCを多く含みシロップ、ジャム、ハーブティー、スキンケアの他、ビタミンC補給のサプリメントなどに加工されています。

2018年6月7日木曜日

アンティークバカラ ピェ・ドゥファン BACCARAT SUR PIED DAUPHIN





19世紀末期のバカラのカタログに見られるドルフィン型ペデスタルのアイテムです。現物を入手したわけではないのですが最近綺麗な画像を複数入手する機会がありブログに追加することにしました。

1893年のカタログでは
2ページにわたり、このドルフィン型ペデスタルの器が掲載されています。他に現物画像にあるようにキャンドル、スタンドやランプなども製造されていました。




1893年のカタログページ




カタログページのタイトルはCoupes sur pied Dauphin直訳するとドルフィン型ペデスタル上 クープですがこれ、どう見てもドルフィン=イルカではありません。

フランスアールヌーヴォー期にはこの種のデコレーションの施された品物が他にもいろいろ製造されていたようで、フランスのアールヌーヴォースタイルとつい思いがちですが、これアールヌーヴォーの装飾の中でもジャポネスク・スタイルだったということを裏付ける資料を見つけました。

昨年ミラノの中央図書館での展示で見つけたフランスのアールヌーヴォー期の月刊雑誌 Le Japon Artistique (1888-1891年発行) 鯱 つまり「シャチホコ」の紹介ページ見つけたのです。実存しない空想の動物はきっと当時のフランス人の好奇心をそそったに違いありません。




シャチホコは日本では一般的に本来 は、寺院堂塔内にある厨子等を飾っていたものを 織田信長が安土城天主の装 飾に取り入り使用したことで普及したといわれていますが、起源をさらに辿ればスタイルからも想像できるように中国から伝わってきています。中国語版ウィキペディアによれば中国の漢時代 (前漢 紀元前206年 - 8年と後漢 25年 - 220年)に宮殿屋根の尾根の両端に、火災を防ぐためにこのような形状の胸部動物を設置するようになったと言います。この奇妙な動物は中国古代の伝説の奇妙な鳥であると言う説と、海の魚の竜の9人の息子の1人であるとだとする二説に分かれます。 明と清の王朝では、大規模シャチホコが宮殿建設のために使るようになります。

日本語版ウィキペディアによれば日本へは仏教建築とともに伝わったようですが、大棟の両端に取り付け、鬼瓦同様守り神とされたました。建物 が火事の際には水を噴き出して火を消すといわれていますので、火事のお守りという意味合いは中国からそのまま伝わったことになります。


Photo©Terumasa
時代によって変遷してきた姫路城のシャチホコ


2018年5月1日火曜日

アンティーク バカラ リキュールセット 30 BACCARAT SERVICE A’ LIQUORE 30


3月4月と本業が忙しく、ブログの更新を怠って失礼していました。
その間に手元に届いて、オークションに出品するまでもなく手元を離れていった品もあります。

そんな中に珍しいリキュールセットがありました。
トレー: 220x310x h30mm
ミニグラス:  35øx 80mm

デキャンタ:ストッパーなし : h190x86ø 
ストッパ付き: h227 
だだし,このストッパーはオリジナルの形状ではありません。





グラスは普通の金彩ですがデキャンタ(カラフェ)の金彩はレリーフ状でグレード感は迫力あります。


キャスト成型のトレーにバカラマーク
キャスト成型の製品には1875年以降マークが入ります。





20世紀初頭のポスターに掲載されている品ですが、ポスターに掲載の品は無職透明クリスタルなのに対し、この品のクリスタルの色は美しい緑色。


ストッパーなしで購入したので、ストッパーはオリジナルの形状ではありませんが、このコンビネーションだと丁度1907年カタログ掲載のメディシスと同じ形状になります。


特にモデル名はないので名前の由来の項は割愛します。