2024年2月17日土曜日

アンティーク サンルイ リベルティ (仮) SAINT LOUIS LIBERTY


アンティーク サンルイ アンヴェールのセットと一緒になっていたグラスです。


カップ部下方にペーズリーのようなエッチングが施され品格があるので、メジャーメーカーの品ではないかと調べたところ、 同じエッチングの品が1900年の サンルイ のけ高級品カタログの中の リベルティ(LIBERTY)という名で金彩ヴァージョンが掲載されていました。





バカラでもそうですが金彩を施された品と無彩の品では、同じエッチングでも名前も異なることが多いので別の名前があるのではないかとブログページのタイトルは「リベルティ (仮)」としてあります。


また金彩ヴァージョンは脚部も面取りのカットがされてありますが、この無彩の品は断面が丸のままです。


もしもこの無彩の品の正式名称をご存知の方がいらっしゃいましたらご教授いただければ幸甚です。




名前の由来


19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパを中心に開花した、花や植物などの有機的なモチーフや自由曲線の組み合わせによる従来の様式に囚われない装飾をフランスでは「新しい芸術」を意味するアール・ヌーヴォーと呼びますが、イタリアではリベルティ様式と呼びます。

この呼び方はロンドンの高級百貨店リバティーに由来しています。


英語ではリバティーですが、アクセントは異なりますがフランス語でもリベルティと呼ぶようなので、名称はフランス語読みでリベルティと記載しました。



ロンドンの高級百貨店リバティー本店



イタリア人はフランス人にライバル意識を持っているから言葉をフランスから輸入しなかったのかと疑いましたが、実際にはフランスのアール・ヌーヴォー運動以前に19世紀のイギリスのヴィクトリア朝のアーツ・アンド・クラフツ運動としてデザイナーのウイリアム・モリスやジョン・ラスキンなどが似たような様式を先駆的に始めていて、フランスではそれを建築なども含めより広範囲に応用され発展させたたと言えます。



現在もリバティー百貨店のウエブ・サイトのヘッダーに使われている

ウイリアム・モリス(1834−1896)のテキスタイルの意匠。







ウイリアム・モリスによるテキスタイルデザイン


一方、カップ部下方にペーズリーのようなエッチングが施されているので、ペーズリーについても少し触れましょう。


日本語版のウイキペディアを見るとペーズリーの発祥地はインドかイランかアフガニスタンか不明であると書かれていますが、西欧ではペーズリーの発祥地はイランというのが通説です。



ペーズリーの名自体はペイズリーをあしらったカシミア・ショールの模造品がスコットランドのペイズリー 市で大量に生産されていたためにペイズリー 市の名前がついたのだそうです。



イランの木版ペーズリースタンプ




イラン旅行の際にイスパハン市で買った木版のテーブルクロス




イタリアでもコモ湖畔が本社の有名シルクメーカーのラッティ(Ratti)社が緻密なペイズリー模様のプリントでとても有名です。




リバティー百貨店は19世紀から現在に至るまでペイズリー模様プリントの製品を多く製造販売してきました。下の写真は現在のリバティー百貨店のサイトのペイズリー模様プリントのページ。


イタリアではアール・ヌーヴォー様式がリベルティー様式と呼ばれていることから色々遠回りをしましたが、おそらくこれがサンルイの製品名の本当の起源なのでしょう。