2019年1月11日金曜日

偽物情報 II ミケランジェロの模倣品の見分け方 Fake Baccarat Michelangelo



偽物のミケランジェロ

 今までに何度か、マークなしの品をお求めになった方に「偽物じゃないですよね?」と念を押されたことがあります。
そういうときには「基本的にはヨーロッパにはコピー品を作るという文化はありません。」とお返事しています。

アジア人には想像しにくいかもしれないのですが、事実コピー品を作るという発想はヨーロッパ人にはなかったといえます。悔しいことにヨーロッパでは「コピー品を作るというのは日本人の数少ない発明」とまで言われています。初めて聞いたときは憤慨しましたが、何十年か前の日本のこと思い出せば憤慨するよりは反省した方がいいのかもしれません。いまではアジアの他国がコピーのトップとなってくれたので日本人も肩身の狭い思いをしなくなりました。

ヨーロッパでも例外的にイタリアのナポリに限ってコピー品が作られていると言われています。主にどんなアイテムの偽物が作られているかというと、生産の柱は利ざやの莫大な偽札です。ここ何十年は偽のブランド品バッグなども多く製造されているそうですが、ナポリのコピーメーカーからヴィンテージ、アンティークのクリスタル製品のコピー品が出る心配はないと思います。手短に言うと割りに合わないでしょうから。バッグなどと比較しヴィンテージ、アンティークのクリスタルのマーケットは極めてニッチ上、設備投資も必要なでさらにエッチングの入った品等は製造にも手間もかかりすぎます。

 

最近フランスでこの模倣品セットがデキャンタ、ピッチャーも含めたセットでオークションに出ていたため、
やっと全貌を把握しました。グラスだけ見ると紛らわしいですが、
デキャンタ、ピッチャーを見ればバカラ製品でないことは一目瞭然ですね。


コピー品は作らなくても真似というのはヨーロッパでもあります。バカラのアンティーク、ヴィンテージモデルでもバンブーやミケランジェロなどの大ヒット品には最盛時に作られた後追いのヴィンテージ「類似品」というのが存在します。それでもヨーロッパのメーカーの大半は基本的に「丸々コピー」はしないので、完全なフェイクではなくどこかが微妙に異なります。大抵の類似品は素人でも一見して本物とは異なるとわかる良心的な模倣です。


ただ、ミケランジェロに限っては非常によく似た品が存在しします。中でも最もよく似ているのが写真の品。ヨーロッパのebayやヤフオクでもバカラのミケランジェロとして取引されているのを見かけます。おそらく売り手も買い手も悪意はなくそう信じ込んでいるのでしょう。

本物と模倣品の見分け方を記しておきます。

最も簡単な見分け方は脚の付け根のくびれが大きく細く引き締まっています。本物のミケランジェロは1933年のカタログにもあるようにカップとベースの接着面が広くなります。
本物ミケランジェロランジェの詳細はこちらをご覧ください。


左本物             右偽物















アシッドエッチングもミケランジェロとほぼ同じエッチングパターンがありますが、よく見るとエッチングのディテールも微妙に違います。




左本物             右偽物












以前は信用していたアメリカのヴィンテージ食器の百科事典のようなウェブサイトでも、この模倣品がバカラのミケランジェロの正式モデルとして掲載され売られていて私も長い間模倣品か否か謎だったのですが、そのサイトも良く見ると他多数の間違いがあり盲目的に信用してはいけなかったのです。

よく考えれば当然。ロングステム、ショートステムのバリエーションならいざ知らず、生産に金型も必要な製品を、同じメーカーが少しだけ脚のくびれだけ異なる形状で、しかもパターンは微小だけど違う製品をリリースするというのはあり得ない、のです。
長年商品開発の仕事(本業)に携わってきたプロとしてもっと早く確信を持つべきでした。

バカラには特注生産品も多くありますが、別途特注するにはあまりにも似過ぎています。