2022年7月12日火曜日

アンティークバカラ エトワール BACCARAT ETOILES



エトワール シリーズ


1903年カタログページ グラヴュール:4770 Etoiles = エトワールとあります。

1916年カタログページ



似ているけど違うもの

同じく星のエッチングがあり似ているので、一般的にはこちらもエトワール と呼ばれていますが、こちらのカットとグラヴュールの番号は4771で、「Etoiles、エトワール」という記載はありません。






サイズ表




名前の由来


ご存知とは思いますがEtoiles、エトワールといういうのはフランス語で「星」という意味。


星の画像はこちらのリンクから拝借しています。

https://www.gmpe.it/astronomia/stelle



空の星の他にエトワールというとくクラッシックバレエの”スター”バレリーナのことをさしますよね、そこでこの項目は独断で、私の地元ミラノ出身で、1981年にニューヨークタイムズが「史上最高のエトワール 」と絶賛したカルラ・フラッチの話を少しですが書くことにします。



カルラ・フラッチ


カルラ・フラッチ(1936ー2021)の父親はミラノ市電の運転手、という極めて庶民的な家庭に育ちます。

ブリジョワ以上の家庭の女子が優雅な所作を身につけさせるためにバレエを習わされるのはこちらでは一般的ですが、カルラはそういう社会層の家庭出身ではなく、お父さんの務めるミラノ公共交通機関の余暇サークルで踊った彼女の才能に目をつけた知人がスカラ座のバレエ学校のオーディションをぜひ受けるようにと強く勧めることからじ始まります。



カルラ・フラッチと父親のミラノ市電の運転手




カルラ・フラッチと父親のミラノ市電の運転手。決して経済的に楽ではない家庭だったと想像しますが、両親のふんだんの愛情を注がれて育ったことと彼女それに感謝していることが伝わってくる写真です。お父さんはスカラ座の前を通る1番のトラムを運転していて、スカラ座の前で必ずベルを鳴らしたと言います。


スカラ座のバレエ学校バレエ学校を卒業し2年後にはソリストに、その2年後にはプリマバレリーナ、つまりたったの4年でスカラ座のエトワールになります。


ロマンチックでドラマチックな演目を得意とし、彼女の踊るジゼル、ロメオとジュリエット、コッペリアなどは特にゆうめいで世界中の一流バレエ団と共演します。


バレリーナ第一線を退いてからも各地のシアターのバレエ団の監督などをして文化的に大きく貢献します。


だいぶ年配になってからのインタビューを聞いたことがありますが、その当時進めている様々な企画の話をする彼女に「たくさんの仕事をしてらして素晴らしいですね。」というインタビュアーのコメントに、「たくさんの仕事は、それを信じてするのなら、素晴らしいのです。」という彼女の答えが印象的でした。



カルラ・フラッチ

2021年に彼女がなくなった時、市の交通局は白いトラムをスカラ座の前に留めて長くベルを鳴らして哀悼の意を表しました。

カルラ・フラッチ哀悼のために用意された白い市電