2017年4月13日木曜日

アンティーク サン ルイ トミー SAINT LOUIS TOMMY

2020年4月5日更新


トミーのデキャンタ


トミーのピッチャー

トミーシリーズのアイスペール


トミー(Tommy) は1928年リリースで、現在も製造されているサンルイを代表するモデルのひとつです。無色透明の他幅広いカラーバリエションがあります。

非常に手間のかかる美しいなカットで、とてもに装飾的でありながら飽きのこないタイムレスな魅力があります。でも高額でなかなか手のでない逸品でもあります。

赤いシャンパンフルート グラスのみ入手しました。

口径52mm   高さ188mm ベース径66mm

1930年のサンルイのカタログから




似ているけど違うもの I

現行品とアンティーク品の比較です。

シャンパンフルート グラスの現行品は205mmですが、調べたところマークがないほど古いものは概ね188mm前後のようです。いつ頃サイズが変わったのかはわかりません。
その他の大きな違いとして、現行品はカップ下部のダイヤモンドカットの下に色ガラスの被せを残していますが、アンティーク品はカットで色を残さず透明となっています。
左アンティークフルートグラス 右現行品 写真はサンルイ公式サイトから


1948年のサンルイのカタログ
右側がトミーダイヤモンドカットの下に色ガラスの被せは残っていません。




似ているけど違うもの  II

本物と偽物(類似後追い品)との比較です。



左が本物、右がロレーヌ地方のクリスタル会社の追随品です。これはロレーヌ地方のクリスタルと言って売られていて、サンルイのトミーと偽って売られていたわけではありませんが、明らかに似せる意図で作られているので、ご紹介しておきます。

違いはまずプロポーション。サンルイの品はスマートです。
カットはダイヤモンドカット部に色被せを残しています。また、カットも粗めです。
カットから脚に繋がる部分も意匠が異なります。


似ているけど違うもの  III

Cristal de Paris というメーカーの類似品です。

カップ部は酷似していますが、脚の部分のデザインが異なります。

••••••••••



似ているけど違うもの  III

ベース部にカットがないこと以外酷似している偽物です。




「映画とグラス」・「昼顔」(Belle de jour ・1967年)


スペイン人鬼才映画監督ルイス・ブニュエルの( Luis Buñuel「昼顔」(Belle de jour ・1967年)ブルジョワの医師の美しい若妻のセヴリーヌ(カトリーヌ・ドヌーブ)が、銃で撃たれて負傷した夫に砂糖水を飲ませるシーン。無色透明のトミーです。



映画監督によってはほとんど食事シーンのない監督もいますが、ルイス・ブニュエルは、メキシコ時代の映画も含めゴージャスにクリスタルの並んだテーブルセッティングのシーンが多く、そのうちまたまとめてブログの記事にしたいと思っています。



「映画とグラス」II「恋人たち」(Les Amants 1958年)
このグラスは有名なので名画の中のにもよく登場します。


写真はルイ・マル(Louis Malle) 監督の「恋人たち」(Les Amants 1958年)

 ディジョンの地方新聞のオーナーが妻(ジャンヌ・モロー)の愛人を招いて食事をする場面。



夜眠れず、起き出してウイスキーの水割りをハイボールグラスで飲むシーン。

因みに、こちらは同じ映画の同じ家庭で普段の食事風景。普段使いのグラスです。


「映画とグラス」III・「パリの大泥棒」(Le Voleur 1966年)

ルイ・マル(Louis Malle)監督は富豪の家庭で生まれただけあって、貴族出身のルッキーノ・ヴィスコンティ同様テーブルセッティングに細かい配慮があります。

トミーは中でも同監督のお気に入りだったようで、ジャンポール・ベルモンドが主役を務める「パリの大泥棒」(Le Voleur 1966年)でも、兄の援助でロンドンで贅沢に暮らす泥棒仲間の妹の家の食事シーンでもトミーが使われています。


「映画とグラス」IV・「ダメージ」(Damage 1992年)

またルイ・マル監督の「ダメージ」(Damage 1992年)の中でロンドンのブルジョワ家庭の田舎に住むお祖父さんの家で婚約発表をするシーンでもトミーが使われています。
ルイ・マル監督は映画の中でトミーを多用していますが、けして小道具の使い回しではなくて、同じ映画の中でもシュチュエーションに応じて様々なグラスを使い分けています。

田舎に住むお祖父さんの家で婚約発表をするシーン グラスはトミーです。


こちらは同じ家庭の普段の食事のテーブルセッティング


彼女のフランス人の母親の家で食事をするシーン。フランスらしいエッチング入りのグラスが使われています。


「映画とグラス」V・「ハッピー ファミリー」(Happy Family 2010年)

珍しくイタリア映画でトミーが使われています。ガブリエレ・サルバトレス監督の「ハッピー ファミリー」(Happy Family )2010年のミラノが舞台の映画です
ミラノの一等地に住む弁護士の家での食事風景。ブルジョワの家庭の16歳の息子の婚約者一家の紹介と弁護士の父親のお誕生会を兼ねた食事会という設定。


メニューの告知を間違えるアルツハイマーのお母さんを言い聞かせるために食卓を立ち上がる弁護士




コースの食事が終わった後、ケーキを出すシーン。飲み物はシャンパンまたはスプマンテ。
デザートをサービスする時点では、このようにケーキ皿以外の食器は全て片付けるのが普通です。



••••••••••


名前の由来
トミーTommy は英語フランス語の名前トーマスThomas、イタリア名Tommaso の略称、愛称ですが、他にイギリス兵のことを指すこともあります。
このグラスが一体どのトミーから名を受けたのかは知る由もありません。

こじつけになってしまいますがトミーTommyと言えばキップリング の詩がありますね。
Tommyという詩はイギリス兵のプライベートの外出時の情景を描いたものです。
英和両方でで全文掲載しているサイトがあるのでご紹介します。
https://blogs.yahoo.co.jp/fminorop34/51500271.html



イギリス兵(Tommy) Alphonse de Neuville画


キップリング  ポートレート

詩人のジョゼフ・ラドヤード・キップリング (Joseph Rudyard Kipling, 1865年12月30日 - 1936年1月18日)は『ジャングル・ブック』などで知られ児童向け作品は古典として愛され続けている小説家で、2016年に映画化されています。
一連の作品は「多彩で光り輝く物語の贈り物」と言われていて、1907年にノーベル文学賞を、41歳の史上最年少で、イギリス人としては最初に受賞しています。


左:ジャングルブック I 初版表紙  右:ジャングルブックII 表紙


MowgliによるジャングルブックII


でも、キップリング の詩なら、「If (もし)」という詩のほうが個人的には好きです。
リンクはこちら。

2017年4月11日火曜日

アンティーク バカラ ジルベール カット入り BACCARAT GILBERT + TAILLE’

2020年12月2日更新


アールデコ期1931年から1961年まで製造されていた バカラ ジルベールの形状に一見ランダムな大胆なカットが施されている品です。当時としては密で構築的な従来のカットのパターンから脱する斬新な試みだったのではと想像します。

ジルベールにカットを施したものといえばジャン・リュース(Jean Luce)がデザインした、米粒のようなカットを全体に散りばめた「パリ Paris」というモデルがつとに有名で、一説によればこのジルベール本体自体もジャン・リュースのデザインとのことですが、未だ裏付けは取れていません。フランスのebayではかのジョルジュ・シュバリエの作だと言って売っている人もいますが、間違えだらけのかなりいい加減な記述だったので信用できません。

1933年のカタログより



おなじみ映画とグラスですが、こちらは映画の一場面ではありません。
巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督と一人娘パット
多分二ューヨークのレストランでの食事風景。
カットなし、プレーンのジルベールが使用されています。




このモデル今回初めて入手しました。
バカラ製品は同型でもエッチングやカットが異なると製品名が変わるので、この品にも名前があるはずですが、判るまではジルベール カット入りとさせていただきます。もしもブログの読者でご存知の方がいましたらご教授ください。

今度「パリ」が入手できたらジャン・リュース(Jean Luce)について詳しく書きたいと思っています。


”似てるけど違うもの” 

グーヴューのデキャンタとの比較です

ストッパーも含めたこのデキャンタの形は他にゴルフジュアンにも使用されていますが、本体部分はグーヴューと同じ型を使用しています。

このデキャンタはコロンとした小さいお団子のストッパーに特徴があり、グラスの脚部にも共通の意匠が施されています。

写真はグーヴューとの比較です。首の長さ太さが若干異なりますが製造工程上あり得ることです。

Dany Sautot著のBaccarat Una manifacture francaiseにはグーヴューと同型でエナメル彩のものが掲載されていて1921年のリリースとされています。




名前の由来
GILBERTは英語、仏語などの人名地名で(発音はフランス語ではジルベール、英語ではギルバート)す。著名人は大半が英国人かアメリカ人、一人だけ著名フランス人の医師がいます(遺伝性肝疾患ジルベール症候群はこの医師の名がつけられています)が、バカラ製品の名前になりそうなフランスと関わりの深い文化人は見当たりません。

地名にも多く使われていますが大半はアメリカの知名度の低い町の名で、唯一由来可能性のあるのは太平洋にある16の珊瑚礁の島及び環礁からなるギルバート諸島でしょうか。
というわけで、これが由来だという確信はありませんが、少しギルバート諸島のことを書くことにしました。





ギルバート諸島はマーシャル諸島の南東に位置し16の島から構成され、現在ギルバート諸島(フランス語読みでジルベール)はフェニックス諸島ライン諸島とともにキリバス共和国となっています。

島の名は1820年にフランス人船長L. I. デュペレ(Louis Isidore Duperrey)が地図に島を追加する際にクルーゼンシュテルン(Adam Johann Christoph Adolf Cavaliere von Krusenstern)により「ギルバート諸島」命名されます。
1945年のギルバート諸島



ヨーロッパ人が発見する数世紀前からからミクロネシア人が住んでいたと言われています。1788年に英国人航海士トマス・ギルバートとジョン・マーシャルによって発見されたため、現在のギルバート諸島にはトマス・ギルバートの名を、マーシャル諸島にはジョン・マーシャルの名が付けられました。

トマス・ギルバートとジョン・マーシャルがイギリス人であったためイギリスの植民地となり、大二次世界大戦中には日本軍とアメリカ軍の交戦の場となった暗い過去もありますが、1971年には住人が自治権を持ち、1979年にキリバス共和国として独立します。

国民総生産の約二割が観光収入ですが、生憎日本からの直行便はないそうです。