2015年9月29日火曜日

年代別バカラマーク BACCARAT FACTORY MARKS CHRONOLOGICAL

2016年2月16日更新

このブログを見て下さる様な方々には既知の内容だと思います。今更書く必要もないかかと後回しにしていましたが、やはりバカラに関するブログには必要不可欠と 年代別バカラマークについて纏めてみました。

バカラの商標は1860年10月29日にパリ商業裁判所に登録されました。(出典:バカラ公式サイト 日本ですと商標は法務局に登録しますが、少なくとも当時のフランスは商業裁判所に登録していた様です。)



最も古いマークはシルクスクリーンで刷られたエナメル(塗料)のマークもあったそうです。この時代の品物はそう簡単には手に入らず、残念ながらこのマークは写真すらも見たことがありません。
将来運良く見つかったら写真を追加します。









1862 - 1936年の間はこのような紙のシールが貼られていました。現在マークのない物はこのシールが貼られていたと解釈されています。






1875年以降、モールディングの製品に限りbaccarat dèposè という文字が入ります。dèposèは「登録済み」という意味です。

商標が登録されているという意味とも解釈出来ますし、イタリア語だとこの言い方(dèposè =depositato)は個々のモデルの意匠が登録されているという意味で使われることも多くdeposèが何を指すのかにより意味が変わってきます。長い間断定出来ないでいたのですが、1894年のバカラの請求書用紙 のバカラマークの円の外側に"MARQUE DE FABRIQUE DE'POSE'(登録メーカーマーク)と書かれているのを見つけたので「登録商標」という解釈が正しいことになります。今で言う®という意味ですね。
但、昔のカタログページ等にはmodele dèposè (意匠登録モデル)と書かれているのも頻繁に見かけます。



1920 - 30年代香水瓶に限ってこのようなマークが入っていました。
FABRIQUE EN FRANCE(MADE IN FRANCE)という文字が円の外側に入ります。







1862 - 1936年の間でも比較的新しい物にはこういうシールもあります。








1936年 - 1969年は紙シールと同じ意匠のエッチングが入ります。
エッチングのテクニックはアシッドエッチング。
。。とバカラ公式サイトにはあります。

更に個人的な観察で詳細を書くならばこのアシッドエッチングのマークにもいくつか種類があります。左は初期1930年代頃のもの。



こちらは後期1960年代のもの(推定)と思われます。
1970年代以降のマークに似て来ています。



1970 - 1989年は現行品と同じモダンなマークが入ります。エッチングのテクニックとしては、アシッドエッチングのモデルを従業員の健康のため一掃した後のマークですし、ステンシル風のデザインですので、サンドブラストと 思われます。

日本ではこのマークは1990年からだと信じている人が多いようですが、それは誤りで、1970年からとバカラ社創立250年記念展覧会のカタログに記載されている確実で信頼できる情報です。



1990年 - 現在 モダンなマークは1970年からの物と同様で、さらにBaccaratというロゴがはいります。
レーザーによるエッチングになります。

私感ではブランド名をこんなに目立たせるのはあまり良い趣味ではないと思うのですが、ブランド志向のエスカレーションする時代の流れに逆らえなかったでしょうか。
だから、と、勿論それだけではないですが、やはりアンティーク、ヴィンテージ品が好きです。

2015年9月27日日曜日

アンティークバカラ チューリップ型ローハン BACCARAT CHATEAUBRIANT

2016年3月19日更新

©Galleria Kajorica

シャトーブリアン全種類

左からシャンパンクープ   H67mm 160ml
リキュールグラス   H60mm 40ml
デザートワイン(ポートワイン)グラスH88mm 120ml
白ワイングラス   H98mm 165ml
赤ワイングラス   H107mm 210ml、
ウォーターゴブレット H116mm 250ml
デキャンタ H270/345mm 800ml
ピッチャー   H198mm 1000nl
(寸法はロットにより2-3mm異なるこもとも珍しくありません。mlは満水容量)


グービュー、ローハン、コンブールとローハンパターンを施したモデルの名前の由来を書いて来たのでシャトーブリアンも紹介しない訳にはいきません。

Murcie (スペインの町の名前でスペイン語ではムルシェと発音する様ですが、フランス語だとムルシャと発音。)というチューリップ型のモデルにローハンパターンを施したモデルです。

このシャトーブリアンに一目惚れして私のバカラマニアが始まったといういわく付き、バカラ製品でで最も好きなモデルの一つで、最も愛着のある品です。
チューリップ型が持ち易くまた優雅な形状。

1962年に製造中止されていてローハン程製造数が多くなかったためかなかなか売りに出ない上、たまに売りに出ても高価な事から転売用に入手する事が出来ないでいます。幸運にも入手出来たら出品しますが、今のところこの項はモデル紹介とその名前の由来の記述のみとなります。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

”似てるけど違うもの” 
(新設:よく似ている品の違いの解説コーナーです)

シャンパンクープ、左側がシャトーブリアン。右側がローハンのシャンパンクープです。
単に高さが15ミリ異なるだけでなくシャトーブリアンのクープグラスは口がやや開いていますがローハンはそのまま単一曲線で上に立ち上がります。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


名前の由来
シャトーブリアンという町があり、同名のお城があり、シャトーブリアンと呼ばれる貴族がいます。町に因んだのかお城に因んだかそれともお城を造った Châteaubriand(t) 一族に由来するのかは断言はできませんが、貴族シャトーブリアン家のお城のあるコンブールも製品名になっている事からお城に因んだのではないかと推測します

スペルですがヨーロッパの検索サイトだとBaccarat-Châteaubriantと入力するよりBaccarat-Châteaubriand とd終わりで検索する方がヒット数が断然多いのですが、1933年のカタログに Châteaubriant と明記されているのでバカラ製品名としては”t”終わりが正しいことになります。
町名シャトーブリアンも18世紀まで主に”d”終わりで書かれていたのが19世紀頃から”t”終わりが定着したとの事。

まず 町の名としてのシャトーブリアン(Châteaubriant)は11世紀中世にレーヌの伯爵の同盟者ブリア(Brien)氏によってシェール川とロラール川の合流地点の戦略的な丘の上にお城が建設されたのが起源。ブリア(Brien)氏のお城(Château) という意味 でシャトーブリアン(Châteaubriant)。判り易いですね。

そしてお城の周りに出来て行った町がシャトーブリアンと呼ばれる様になり、この Brien氏は一代目Brient de Châteaubriantとなり、二代目は十字軍に参戦して活躍するなどして13世紀には男爵家へと出世します 。十字軍で活躍した為に元の鱗柄の様な家紋にフランス王家の百合の紋が入る様になります。

でもその後シャトーブリアンのお城の所有者は何度か代わり、ルネッサンス期に大規模な改造をされ現在に至っています。

シャトーブリアン家のお城というと別の優美な コンブール城 (Château de Combourg)を指しますがそちらの詳細は、ローハンパターンでロングステムのモデル、コンブールの項目での記載をご覧下さい。

シャトーブリアンの町は現在人口1万2千人程度の町で、ロワール=アトランティック県に区分されていますが、歴史的にはブルターニュに属します。
百年戦争で仏英の戦いの場となった城の周りで発展し、経済は長い間農業やウシの飼育で成り立っていましたが、19世紀には金属加工業、その後プラスチック製造が盛んになりました。 19世紀から都市化が始まり、中世からあった街全体を取り囲む城壁は取り去られたそうです。

この町にまつわるエピソードとしては、フランス革命時代に共和国派と王党派の戦いの舞台となりこの時期に、共和派でナポレオン軍の軍人ジョセフ・レオポルド・ユーゴーが恐怖政治のためにナントから出生地であるシャトーブリアンへ逃れてきていたソフィー・トレビュシェと出会い、2人の間に生まれたのがフランスでとても愛されている作家のひとりヴィクトル・ユーゴー なのだそうです。
シャトーブリアン城


シャトーブリアン城 中庭に面した回廊 © Oie blanche

Châteaubriantはレンヌの南約50キロで、パリのモンパルナス駅からTGVでレーヌまで乗り、ローカル線に乗り換えて3時間半から4時間(乗り換え時間による)で到着します。


ビクトル・ユーゴー(レオン・ボナ画)

2015年9月24日木曜日

アンティークバカラ ローハン ロングステム BACCARAT COMBOURG

2021年6月8日更新


      ©Galleria Kajorica





両城コンブール と呼ぶかはは確信がないのですが二種類あるロングステムのローハンパターングラスのうち、上は口が広がっているタイプ。下は口が広がっていないタイプです。
ステムを持てるのでクラシックでありならが同時に今日的な使用の仕方ができるグラスです。




名前の由来
バカラのグラスはロングステムとノーステムまたはショートステムでは全て別名が付いているので、このローハンのパターンでロングステムのグラスも絶対ローハンとは別の名があるはずと探してみたら、どうやらコンブール(Combourg)という名前の様です。フランスのヴィンテージ アンティーク クリスタル専門店のサイトでみつけました。間違いも多少はあるサイトですし、インターネット上の情報は鵜呑みにしない方が良いといつも自分に言い聞かせているのですが「コンブール」と書いてあるのを見つけてとても納得してしまいました。

何故って、そうすると、バカラのローハンパターンの製品はグービューを除き全てブルターニュの有名なお城の名前がついていることになるのです。いずれも町の名前でもありますが、それ以上にお城が有名である共通点もあります。
でもグービューは何故グービューなのでしょう。不思議。

ローハンのパターンを施したモデルで有名なのは他にチューリップ型ショートステムのシャトーブリアンがありますが、シャトーブリアンとコンブールは切っても切り離せない関係にあります。

レーヌの南50kmの城下町シャトーブリアンにはシャトーブリアン家の祖先が建てて、後に人手に渡ったシャトーブリアン城がありますが(詳細はシャトーブリアンの項目で書きます。)一方シャトーブリアン家のお城というとレンヌの北30キロにある優美な コンブール城 (Château de Combourg)のことを差すのです。



シャトーブリアンのスペルはヨーロッパの検索サイトだとBaccarat-Châteaubriantと入力するよりBaccarat-Châteaubriand と「d」終わりで検索する方がヒット数が断然多いのですが、1933年のカタログに Châteaubriant と明記されているのでバカラ製品名としては「t」終わりが正しいことになります。

また随分沢山の文献を参考にしても未だに不確かなのですが、 作家フランソワ=ルネ・ド・ シャトーブリアン(1768-1848) の姓は「d」終わりですが「t」終わりChâteaubriant家の家系図に入っている事から、「t」終わりのChâteaubriant 家と「d」終わりのChâteaubriand家は同じ家系なのではと思われます。町名は”t”終わりのChâteaubriantで定着し、一族はd”終わりのChâteaubriandで定着したのでしょうか。

もし私の解釈が間違っていて詳細をご存知の方がいらっしゃいましたらメールにてご指摘頂ければ幸甚です。イタリア語は全て明瞭に発音するので、フランス語の様に音として消えててしまう文字がある言語の常識を良く知りません。

コンブール城 Photo: ©Editions Jack    http://www.chateau-combourg.com より
コンブールまではパリのモンパルナス駅からTGVで約2時間のレーヌでローカル線に乗り換えて約30分
乗り換えを含めてもおよそ3時間で到着します。

コンブール城は11世紀にドールの司教の望みで建設され、現存する城は13-15世紀の間に後期ゴシック様式で再建されました。再建当初はドゥ・ゲクラン家(Du Guesclinの所有物でしたが1761年にコンブール伯爵だったルネ=オギュスト・シャトーブリアンによってシャトーブリアン家の居城として購入されました。優美な美しさでとても有名なブルターニュを代表するお城です。

ルネ=オギュストの息子、フランソワ=ルネ・ド・ シャトーブリアンはフランス ロマン派文学の父と呼ばれる高名な作家(1768-1848) でここで幼少期を過ごしました。

貴族の家庭に生まれ革命の激動の時代を文人としてだけでなく王党派の政治家、外交官として 生きた フランソワ=ルネ晩年は政治から身を引き、その人柄の良さから本来なら敵対するイデオロギーを持つ共和派の文人からも愛されたとの記述が残っています。

彼の抱えていた矛盾と葛藤は自身について書いた;

伝統としては専制主義、名誉のためには 君主主義
         習慣としては貴族的、良識としては共和主義」


« Monarchiste par hérédité, légitimiste par honneur, aristocrate de moeurs, républicain par bon sens. »  (1848)

               この短い一文にに要約されてといってもいいでしょう。

フランソワ=ルネ・ド・ シャトーブリアン

因に、一頭の牛から僅か(600g-4kg)しか取れないヒレ肉を使う有名なシャトーブリアン・ステーキはこの フランソワ=ルネ・ド・ シャトーブリアンが料理人に命じて作らせたためこの名前がついたとのこと。贅沢ですね。

シャトーブリアン•ステーキ©Jeremy Keith-from Brighton & Hove