2022年1月15日土曜日

アンティーク バカラ クリスタル サリエール 塩入れ  402B BACCARAT SALIERE DOUBLE 402B・S637

 







1800年代後半から1920年ごろまで長く製造されていたバカラのクリスタル製サリエールの中でも最も代表的な形のソルトサーバーです。


広く出回っている1907年1916年のバカラのカタログによると小さなサイズは底裏のカットの数が少ないのに比べこちらはカットの数が大きいものと同じ、BACCARAT DEPOSEのマークもなく、またこれほど小さいものは1907年1916年のカタログには見当たらず。


1916年のカタログ


形は瓜二つでもで果たしてバカラか、暫く判断しかねていましたが、20世紀に入ってからのカタログで見る範囲では大きさは大小2種類しか無いのに比較し、1893年のカタログを見ると大小だけでなくサイズのバリエーションがが4種類あり底裏のカットの数も全て同じでであることがわかります。ですのでこちらは19世紀バカラ製品の一番小さいサイズでしょう。





またこのサリエールにはBACCARAT DEPOSEのマークのあるものとないものがあるようですが、1916年のカタログを見ると、この同じ形状で型成形(moulées)で造られた品とそこに更にカットを施している品(Taillées)2ヴァージョンがあります。


この品は底裏は一度研磨され、その後カットが施されていますので、モールド成型の品に見られるBACCARAT DEPOSEのマークはありませんが、モールド成型品より手のかかった高級品と判断して良いでしょう。


今回入荷品のサイズは

長さ:95mm、幅 :  40mm、高さ : 50 mm


2022年1月14日金曜日

アンティーク バカラ ナイフレスト BACCARAT PORTE-COUTEAUX 401B・S497


1916年のバカラのカタログには見られないけれど
1893年から1907年までのカタログには掲載されている、
とても珍しいバカラのナイフレストを入荷しました。


実は手持ちのポーチューのナイフレストによく似ていて、よく見ずに自分用の追加購入のつもりで買ったのですが、よく見ると形が大分違う。

ポーチューのマークも入っていない。

そしてやや重い。そうクリスタルの方がガラスより重いのです。つまりクリスタル製。


一体どこの品だろうと調べたら、なんとか1893年の復刻版バカラのカタログに掲載されていました。


今回入手したこの一連の品の元の持ち主はバカラのサリエールと同じ方なので、同時期のナイフレストをお持ちでだったとしても全く不思議はありません。


1893年のカタログページ

何故かナイフレストの集まったページには掲載されておらず、

サリエールと同じページにあります。


1903年のナイフレストの集まったカタログページ



こちら品番だけで名前はないので、お馴染み名前の由来のコーナーはなしでここまでにします。



”似てるけど違うもの” 

よく似ている品の違いの解説コーナーです)


一応、よく似たポーチューの品、バカラ401Bと同時に入手したもう一つのナイフレスト、メーカー不明ですがカタログでは確認できていませんが3点の比較写真も掲載します。

三つ目は重さはガラスでなくクリスタル製のようです。


左からポーチューナイフレスト ボリュームはほぼ同じですが軽めです。品番未確認

 中央バカラ 401B/ S497    

右メーカー不明、各社カタログでは確認できていませんがクリスタル製です。










2022年1月8日土曜日

アンティークバカラ ヴァランセ BACCARAT VALANCAY

VALANCAY ヴァランセ
今回はリキュールグラスとポートワインサイズの入手でどちらも日本酒向きです。




タレーラン(和名タリランド)とブルボンの中間のようなこのヴァランセ(VALANCAY )というモデルは、1947から、アールデコ様式のモデルが一掃される1961年まで製造されていたそうです。

はじめ写真を見た時はタレーランの研磨修復が大きくて口の反り返りがなくなっているしなか?と思いましたが、タレーランのフラットカットが直線であるのに比べ、これはカット自体にもカーブが入っていてカップ部はブルボンとほぼ同じ、カップの付け根とベース部はタレーランと非常に似ている、というモデル。希少な部類に属する品と言えます。

ちなみにセットになっていたデキャンタはタレーランのデキャンタでした。



”似てるけど違うもの” 
よく似ている品の違いの解説コーナーです)

左タレーラン(和名タリランド)・中央ヴァランセ・右ブルボン の比較
タレーラン、ブルボンが六面カットなのに比べ、ヴァランセは珍しい七面カットです。

上記写真は手持ちサンプルでの比較のため満水用量は微妙に異なり

左タレーラン100ml・中央ヴァランセ 75ml・右ブルボン 80ml



タレーラン(和名タリランド)とブルボンに関してはブログのこちらのページをご覧下さい。


タレーラン(和名タリランド)


ブルボン


名前の由来

あちこちのサイトでこのモデル名は”Valancay”という記述があるのですが、フランス語でValancayという言葉はないようなので、固有名詞Valençayの事ではないかかと推定して、Valençayについて書きます。


Valençay=ヴァランセは ロワール地方のお城の一つで、フランスの名家タレーラン家の古い居城として知られています。そうです、日本ではタリランドと呼ばれているタレーランのお城です。

ヴァランセ城

10世紀頃に建設され、17世紀まで何度か改装されます。


グラスは形状も似ていることから、ネーミングもタレーランと関連つけて、兄弟モデルと考えていたと簡単に推測出来ます。


 AZAYの項目でも書きましたが、ロワール地方は16世紀にフランソワ一世がフランス国王になり権力の中心をパリに戻すまで、10世紀頃から5世紀間に渡りフランス国王やそれを取り巻く貴族によりゴージャスなお城があちこちに建設されたことで有名で今ではユネスコの世界遺産になっています。

ロワール渓谷のお城群に関しては詳細はAZAYをご覧下さい




ヴァランセ城のテラスから庭園を臨む



ヴァランセ城内部


ヴァランセ城内部



名家タレーラン家出身者の中でも特に有名な、フランス革命後に活躍した政治家
シャルル=モーリス・ド・タレーラン=ペリゴール肖像画