2023年10月24日火曜日

アンティーク サンルイ ポアンカレ SAINT LOUIS POINCARE’



新着品ではなくだいぶ以前、バカラのタレーラン(タリランド)のセットに1客だけ紛れて入っていて、普段用に使っていたグラスがアンティーク サンルイ ポアンカレと知り、ページを追加することにします。




最大直径 80mm, 小口径 76mm  高さ120mm

満水容量 220ml




1930年、1948年のカタログにも掲載されているアールデコのモデルです。

バカラのタレーランが本体は厚い作りながら小口が外向けに沿っていて薄くなっているのに比べ、ポアンカレは小口も結構しっかりした厚みで(手持ちのものは2mm程度)内側につぼんでいる為、あまり神経質ならずに使えて便利です。

あえて使い勝手の難を挙げるなら、底が尖っていて綺麗に洗うには細い筆などが必要になります。




1930年のカタログ




1948年のカタログ
デキャンタのストッパーの形状とピッチャーが変わっているのに着目。



恒例の由来のコーナー、ポアンカレ(POINCARE’)はフランスの人名。


特に有名なポアンカレは二人います。


一人目はフランス第三共和制の政治家で弁護士であるライモン・ポアンカレ(1860ー1934)1912−13年フランス共和国主首相を務めたほか一般教育・芸術、宗教相、蔵相、外相などを務め活躍しました。



ライモン・ポアンカレ


二人目は、国際的に知名度が高い従兄弟の数学者で天文学者のジュール=アンリ・ポアンカレ (1854ー1912)です。


ライモン・ポアンカレもアンリ・ポアンカレも由緒あるアカデミー・フランセーズの会員ですが、

製品のリリースが仮に1930年として現存の政治家の名前を製品名にするというのは考えにくいので、ネーミングの由来としては数学者で天文学者のジュール=アンリ・ポアンカレだったと推定してアンリ・ポアンカレを簡単に紹介します。



ジュール=アンリ・ポアンカレ


ジュール=アンリ・ポアンカレは1854年ナンシーの裕福な家庭に生まれ、高校時代から数学教師から「数学の怪物」と呼ばれるほどの秀でた成績を残し、パリのエコール・ポリテクニーク(理学学校)に入学。優秀な成績を残し続け学位を取る前から論文を出版したりします。



卒業後、仕事を始めた後もエルミートの下で学び、パリ大学で数学の理学博士号を取ります。


微分方程式の特性を研究する新しい方法の考案で、一般的な幾何学的特性を研究した最初の人物となった。ポアンカレは、微分方程式が太陽系内で自由運動している複数の物体の振る舞いをモデル化するために使用できることを発見。


イタリア同様、というかイタリア以上に人文系の科目の重視されるフランスで、フランスの数学者、理論物理学者、科学哲学者。数学、数理物理学、天体力学などの分野で重要な基本原理を確立し、多大な功績を残します。




キュリー夫人とポアンカレ 1911年



彼は純粋数学、応用数学、数理物理学、天体力学に多くの独創的な貢献をし、数学で最も有名な問題の 1 つであるポアンカレ予想の定式化。 三体問題の研究において、彼は決定論的なカオス システムを初めて発見し、現代のカオス理論の基礎を築き、トポロジーの創始者の一人とも考えられています。





ポアンカレは1905年に発表された相対性理論を導入し、ローレンツ変換を現代の対称形式で最初に提示します。 彼は相対論的速度に関する変換を完了し、それを 1905 年にローレンツへの手紙に書き写し、マクスウェル方程式の完全な不変性を得、特殊相対性理論の定式化における重要なステップとなります。


。。。と、あちこちに書かれているものをまとめるとこんな感じなのですが、実は高等数学、物理学のことは今一つよく理解していないまま書いております。。。あしからず。


彼の生まれたナンシーには彼の名のついた高校だけでなく、ナンシーの三大学の中でも自然科学・工学系の学部を有する大学はアンリ・ポアンカレ大学路名付けられています。






1902年出版 『科学と仮説』 - La Science et l'hypothèse


『科学と仮説』の中の有名なフレーズ


数学者はオブジェクトを研究するのではなく、オブジェクト間の関係を研究するものです。 したがって、関係が変わらない限り、これらのオブジェクトを他のオブジェクトに置き換えるかどうかは、干渉しません。 素材は重要ではなく、形だけが彼らに興味を持っています。 (P49);


絶対的な空間は存在せず、相対的な動きしか考えられません。 しかし、機械的な事実は、それらが関連付けられる絶対的な空間があるかのように述べられることがほとんどです。 (P.111)。


絶対的な時間はありません。 2 つの持続時間が等しいと言うのは、それ自体には意味はなく、慣例によってのみ意味を獲得できるます。 (P.111)。


「地球は回転する」と「地球が回転すると仮定した方が都合が良い」という 2 つの命題は、全く同じ意味を持っています。 そして一方にはもう一方よりも多くのものは何もありません。 (133ページ)。

2023年10月15日日曜日

アンティークバカラ マリオン BACCARAT MARILLON



バカラ、アールデコ期の希少アイテムに分類できるマリオンのシリーズです。
丸っこくて手に馴染む形状が若干ローハンにも似ています。
エッチングはミレランジェロなどと同じのアシッドエッチングです。







名前の由来


マリオンというのが呼び名なのか、正式名称なのかも検証できておりません。

また、Marillonという名前の由来がわかりませんので判明したら追記します。


Marillonでネット検索するとミュージシャンMarillionばかりがヒットしてきて。。。

ちなみに東京の有楽町にあるマリオンはMullionと書くので関係ありません。


2023年9月28日木曜日

アンティーク バカラ カオール BACCARAT CAHORS(OSTENDE)


 


サイズリスト



今までずっとオステンデと呼んできたモデルは実はカオールという正式商品名らしいと分かったのが数ヶ月前。

カオールについて書かなければと思いつつ時間が経ってしまいました。


通称が正式名称と異なる例は他にもあり、一般的にリシュリューと呼ばれている品は本当はシャンピニー。通称アルハンブラは実は正式名称はブリュッセルという名です。


工業製品に通称がついてしまう、ということ自体が凄いと思いますがさらに通称の方が正式名称よりピンと来る品も多く、リシュリューやアルハンブラはオークションなどではそれで通してしまうこともあります。でもこのブログはできる限り正確な情報を掲載したいので、カオールについても書くことにします。



1907年 カタログページ









名前の由来


カオールはフランス南西部の川の蛇行に建てられた中世の街並みの残る町。位置的にはトゥールーズの北約100km、ボルドーの東約200kmと言ったら分かりやすいでしょうか。

335000年前から人が住んでいたと言われるの長い長い歴史を持つ町です。

カオール全景


街中心部


中世以降は経済的に衰退してし まい、18世紀には大学も失い、今では中世の街並みを味わう観光スポットとなっています。

また、アヴィニヨンで亡くなったローマ教皇ヨハネス22世(在位1316年 - 1334年)の出生地としても知られています。


ローマ教皇ヨハネス22世


百年戦争(1337 - 1453)中、この都市はしばらくイギリスの支配下にありましたが、カオールの領事たちはフランス王シャルル5世を支援することを誓い、「イギリスの支配下であっても、彼らはフランスの心を決して放棄しなかった」と宣言しています。


またこの町には、西欧で最も重要な巡礼地の一つ、サンティアゴ デ コンポステーラへの巡礼路の 1 つであるポディエンシス通りが通っていて、カオールの町の中世の象徴であるヴァラントレ橋は、サン ジャック ド コンポステール街道にあるユネスコの世界遺産に登録されています。



ヴァラントレ橋  Photo©MikeDicaire

別の角度から見たヴァラントレ橋


14 世紀から 16 世紀にかけて高い名声を博したフランス最古の大学の ひとつであるカオール大学は、17 世紀に閉鎖されましたが、 この町にはイエズス会の学校であるリセ ロイヤルまたはインペリアルから受け継がれた優れた中等教育施設が続き、これが後にリセ ガンベッタとなります。 この高校、そしてその前にはイエズス会の大学があり、何世紀にもわたって多くの有名人、法学者、詩人、帝国元帥、医学界の著名人、政治家、ジャーナリストなどを生み出してきました。

ヨーロッパではイエズス会系の教育施設というのはエリート教育で有名。




カオール市の紋章


歴史が長いので詳細を書き出したらキリがなくなりそうですなので歴史に関してこの辺でやめます。


フランスの旅行や中世の建物、巡礼地などに興味のない方はカオールと聞いて最初に思い浮かぶのはワインかも知れません。

カオールは、非常にユニークな赤ワインの産地としてよく知られていて、旧制 ローマ時代帝国にも輸出していた程古くて有名です。当時世界中で高く評価され、街の重要な収入源となっていたそのワインは、イギリス人の支援を受けたボルドーのワインとの熾烈な競争にさらされます。

AOCカオールは、カオールを含むロット県内の45か村で生産される赤ワインで、 マル ベックというぶどうを70%以上使うことが義務づけられており、色合いは俗に「カオー ルの黒」(黒ワイン)と呼ばれるほど濃く、タンニンも豊富で長熟タイプのワインです。 


カオールワイン写真






2023年7月29日土曜日

アンティークバカラ コート アルテルネ デポリ BACCARAT COTE ALTERNE DEPOLIES



直系15cmの低脚ヴァージョン
低脚で小さいサイズでもテーブルに高低がつきテーブルセッティングでとても映えます。



通称コートアルテルネで親しまれているコート アルテルネ デポリ。

1893年のカタログ掲載されていて、1903年のカタログには見られません。

19世紀末の逸品です。

製品リリースから130年かそれ以上経っているのに古さを全く感じないタイムレスなデザイン。


クリスタルの鋳込みでやや肉厚のため丈夫なので経年数に反して比較的コンディションの良い品が多いです。


直径16cm(器内径15cm)の品を長年自宅用に使っていますが、食後に小さめのお菓子をサーブするときなどにとても出番の多いアイテムで重宝しています。

このアイテムブログに載せていなかったのでページを追加します。


カタログには3段のコンポートやマスタード入れ、塩入れなど多くのアイテムが掲載されていますが今まで入手したことがあるのはシンプルなコンポートのみ。リクエストで脚の高い直径25cmの物を仕入れた事があります。

ケーキを置きたいとのご要望でそのサイズのご希望でした。確かにそのくらいの直系があると、用途が広がりそうです。



アイテム名ですが、コートアルテルネ デポリ

コート=リブ

アルテルネ=交互に

デポリ=艶消し

「交互艶消しのリブ」という意味になります。

全く意匠通りのネーミングです。


自分用のものも含めて今まで3回しか入荷したことがないのでサイズリストは割愛しますが、昔のカタログにサイズのバリエーションも記載されていますのでご参考ください。

ちなみに自宅用に使っている品は外径16cmですがそのサイズはカタログにはないので器内径15cmということなのだと推察します。


現在アンティーク市場に出回っている品の印象としては直径20cm以下の品は比較的簡単に見つかりますが、25cm以上は稀で探すのに時間がかかります。


こちらは昨年リクエストで仕入れた直系25cmの高脚ヴァージョン。


以下は1893年カタログページです。






 

2023年7月19日水曜日

ヴァルサンランベールの1905年アルザスワイングラス ヴァルトグラス カタログ・VAL SAINT LAMBERT 1905 CATALOG

ROMERをキーワードに検索をしていたら、ニューヨークメトロポリタンニュージアムの図書館が公開している、ベルギーの高級クリスタルブランド、ヴァルサンランベールの1905年のカタログが出てきたので、ご紹介します。


このカタログは使用頻度の高いテーブルサービス、つまりウォーターグラスワイングラス2.3サイズ、クープ又はフルートグラスからなる食卓セットではなく、カタログ前半がROMERとも呼ばれるアルザスワイングラス、後半がモンスター又はポカルと呼ばれるヴァルトグラスだけのカタログです。


カタログ冒頭カラー部分



1ページに8客掲載されているアルザスワイングラスは33ページ、1ページに4客掲載されているヴァルトグラスは19ページ。つまり何とアルザスワイングラス256タイプ、ヴァルトグラスは76タイプの意匠の異なる製品が1905年の1冊のカタログに掲載されています。



アルザスワイングラスのページ


ニッチなタイポロジーなのにモデル数がすごく多いので驚いて調べましたところ、1900年初め頃のヴァルサンランベールは最盛期で、従業員は約5000人に登り、1904年のテーブルサービスのカタログには192種のモデルが掲載されていて、毎日の製造数は16万品に登ったのだそうです。



一般公開しているので誰でも自由に閲覧可能です。


リンクはこちら:

https://libmma.contentdm.oclc.org/digital/collection/p16028coll13/id/9451


残念ながら同美術館のサイトにはテーブルサービスのカタログはありません。


アルザスワイングラスのページ



モンスター又はポカルと呼ばれるヴァルトグラスのページ