20世紀初頭のカタログに確認することができるこのグラビュールのシリーズはATHIENIENNE(アテニェン) つまり「アテネの」「アテネ風の」と名がついています。
1907年、1916年のカタログで、同じグラビュールでもカップ部や脚部など形状に変化をつけた色々なバリエーションが掲載されています。
これだけの形状のヴァリエーションが作られたということから当時の人気商品だったことがうかがわれます。
ローハン・パターンの生まれる直前の唐草連続模様のエッチングで人気商品、ということから、勝手な推測ですが、今でも大人気のローハンのエッチングパターンは、このアテネ風パターンから発展させたものかもしれないな、などと想像してしまいました。確認の術はありませんが。
今回はカップ部ゴンドラ型、脚部ストロー型のシャンパンクープのみ入手しました。
1907年のカタログ
1916年のカタログ
名前の由来
冒頭にも書いたようにATHIENIENNE(アテニェン) つまり「アテネの」「アテネ風の」と言う意味です。アテネとはもちろんギリシャの首都アテネのこと。
アテネの守護神アテナ
アテネはアッティカ地方にあり、世界でももっとも古い都市の一つで約3,400年の歴史がある。古代のアテネであるアテナイは強力な都市国家であったことで知られる。芸術や学問、哲学の中心で、プラトンが創建したアカデメイアやアリストテレスのリュケイオンがあり、西洋文明の揺籃や民主主義の発祥地として広く言及されており、その大部分は紀元前4-5世紀の文化的、政治的な功績により後の世紀にヨーロッパに大きな影響を与えたことは知られている。
(日本語版ウィキペディア 「アテネ」より)
アテネのパノラマとアクロポリス
©Christophe Meneboeu
古代ギリシャの代表的な遺産パンテオン宮殿が有名ですが、アテネにはローマ帝国支配下のギリシャやビザンティンの遺跡もあり同様に少数のオスマン帝国の遺跡も残されています。
アテネ、アクロポリスにある エレクテイオンのカリアティード
© Thermos Porch
このグラビュールがアテニェン「アテネ風」と呼ばれたのは、唐草の連続模様がギリシャ文様ともよばれるメアンドロ文様からインスピレーションを得たからではないかと推測します。
メアンドロ文様とは、日本ではラーメンどんぶりに付いていて一般にラーメン模様と呼ばれているような連続模様ですが、発祥の地はギリシャだとされているのです。
典型的なメアンドロ文様
典型的なラーメン模様
一部にメアンドロ文様を施した古代ギリシャの壺
紀元前725-700年頃
Photo:©Jastrow
紀元前450-460年頃
また唐草模様(アラベスク)は、日本語版ウィキペディア 「唐草模様」によれば、
古代ギリシアの神殿などの遺跡でアカイア式円柱などに見られる 草の文様が唐草文様の原型であり、メソポタミアやエジプトから 各地に伝播したと考えられている。日本には シルクロード経由で 伝わったとされているそうです。
イタリア ローマ アラ・パチスの唐草模様とメンアンドロ文様
Photo: ©MM
シリア ダマスカスのウマイヤド・モスクの唐草模様
©Jan Smith