そこで今までに私の手元を通過した品のデータを元にまとめてみました。
これが全て、ということではないので今後また異なる品やサイズを入手しましたら更新します。
首下容量は左から1100ml、950ml、1100ml、900ml、800ml
本当のローハンが1931年にリリースされた当時のデキャンタはグラスを逆さにしたようなコロンとした形だったことが古いカタログで確認できます。その後、いつ頃からかわかりませんがシャトーブリアン・シリーズのデキャンタがローハンのセットとして売られるようになりました。
リリース当時のローハンシリーズのデキャンタ
小さめで大容量
小さめで大容量
リリース当時のカタログページ
古いローハンは雫型のデキャンタとセットになっているのもよく見かけます。
またコンブール、つまりロングステムのローハンは大半が雫型のデキャンタとセットになっています。
勝手な私の推測ではローハン以前にクラッシックなロングステム、つまりコンブールが存在していて、1928年リリースのミケランジェロの大ヒットを受けてショートステムのシェイプでデザインしたのが1931年リリースのローハンと考えるのが自然に思えます。
何故なら、現在では一般的にショートステムやノーステムのグラスををアールデコスタイルと呼んでいますが、アールデコを「アールデコ様式」とならしめた1925年のアールデコ展にバカラが出展したのはジェ・ッドーで、まだ従来のロングステムでした。
雫型のデキャンタ
では、どれが一番古いのでしょうか?
形状として最も古いのはこのタイプ。本体が1907年のカタログのリシュリーとほぼ同じで、面取りストッパーでローハンのエッチングが施されています。
長年バカラ製品を見てきていますがこのタイプは一度しか見たことがありません。
プロパー品だったのか特注品だったのかは不明です。
古い型のデキャンタに施されたローハンのエッチング
デキャンタの形としてはシャトーブリアン・シリーズのデキャンタも同型の別カットの品が1907年のカタログで確認できます。
シャトーブリアン・シリーズのデキャンタ
現行ローハンはこの形状のデキャンタがセットになっています。
古いものには首部にもエッチングが入っています。
とてもポピュラーな品としては、通称樽型ローハン、つまりグービューのデキャンタ。
これもグラスのシェイプとコーディネートした形状です。
グービューのデキャンタ
グービューのデキャンタとグラスの形状はDany Sautot著のBaccarat Una manifacture francaiseにはエナメル彩のものが掲載されていて1921年のリリースとされています。
いつ頃ローハンのエッチングが施されて「グービュー」としてリリースされたかは不明です。色々、不明なことが多くて申し訳ありません。バカラの資料を管理している部署に過去のカタログの閲覧を申し込んだのですが、公開はしていないとのこと。
最後にもう一つ珍しいものをご紹介します。
1933年のカタログに登場するCHEVERNYというモデルの形状にローハンのエッチングが施されています。最近入手したこのタイプは大容量で首下までで1100ml。
とても実用的な印象のデキャンタです。
長年バカラ製品を見てきていますがこのタイプは滅多に見かけません。
それでも別の場所で複数回は見たことがあるので、おそらく短い期間製造されたプロパー品だったのだと推測します。
因みに、昔どこかで雫型のデキャンタはシャンパン用だと書かれているのを読んだことがありますが、本当にシャンパン用として考案されたのなら、同じセットで別型のデキャンタがあるはずです。ところがが、そんなセットは一度も見たことが無く、シャンパン用というのはこじつけという気がします。
とは言え、シャンパンには底の広いデキャンタではなく、スリムなデキャンタが適しているので、この中では雫型のデキャンタが最もシャンパンに向いていると言えるでしょう。
何十年も寝かせて美味しくするのは通常赤ワインで、白ワインは比較的早めに飲むものですが、意外なことにシャンパンも赤ワイン並みに長期保存が出来ます。
シャンパンにデキャンタを使用するのはあまり一般的ではありませんが、長く保存したシャンパンをデキャントする場合、時間は非常に短く、15分程度が適切だそうです。
セラーで長期保存されているシャンパン ボトル
尚、イタリアのシャンパン研究家のシャンパン専門サイトでは、長期保存の場合、できれば10-12度、高くても15度までの温度の、セラーなどの温度の変化のない場所で保存。
シャンパン ボトルは上下逆さまにして保存するのがベストとのこと。