トレーにモールディング成形品のバカラマークあり。1875年以降製造です。
今回は香水瓶、化粧水瓶と小さなトレーの3点セットをを入手しました。
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意匠の最も大事な部分がそのまま名前になった直接的なネーミング。
ローリエつまり月桂樹の学名はLaurus nobilis。
月桂樹の葉、ローリエはお肉や魚の煮込み料理の香味としても頻繁に使う身近な存在ですし、衣服の防虫剤として使用することも可能。リキュールを作る人もいますし、また薬用としても利用されます。が、そういう実用としてだけでなく、ヨーロッパの文化の中では象徴的で特別な意味を持つ木でもあります。
月桂樹のイラストWalther Otto Müller図画
まず、古代、ローリエはギリシャ神話の中のオリュンポス十二神の一人、光の神アポロンが勝利と詩の象徴の霊木と指定して、崇められていました。
月桂冠を持つアポロンが描かれた
「光と雄弁と詩歌と美術の神アポロンと天文の女神ウラーニア」
Apollo, God of Light, Eloquence, Poetry and the Fine Arts with Urania, Muse of Astronomy
シャルル・メニエ Charles Meynier (1768–1832) 画
また、古代ローマの博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥス(22/23年-79年 イタリアでは通称 ”Plinio IlVecchio” 「プリニオ老」の意)は、月桂樹の低木には雷は落ちないと皇帝に伝え、ローマ帝国二代目の皇帝ティベリウス(在位:紀元14年 - 37年)は災いから身を守る意味で月桂冠をかむるようになります。
少し脱線しますが、王冠の起源ですが、王冠は古代エジプトや古代ペルシャなどでヨーロッパより先に使用されていました。ヨーロッパで初めて王冠をかむったのはローマ帝国のコーンスタンティーヌス大帝(在位:306年 - 337年)がペルシア風の額帯を採用しました。
古代ギリシャ人や古代ローマ人は詩人やレース競技の勝者などに月桂樹の葉の付いた枝をリング状に編んだ冠、ローレル・リースつまり月桂冠を授与するようになります。
コンスタンティノープル競馬場のテオドシウスのオベリスクに施されたレリーフ。
レースの勝者に月桂冠を渡すローマ帝国の皇帝テオドシウス1世(347-395)
(トルコ・イスタンブール)
ドイツ・ベルリン戦勝記念塔
ティーアガルテンの中央部に立つ、高さ67メートルの石造の塔。
塔の頂上の勝利の女神ヴィクトリアが月桂冠を握っています。
古代ギリシア・ローマ時代には詩神アポロンにゆかりの月桂樹の編んだ冠が詩人にも授けられました。中世からルネサンスにかけてのイタリア人たちがこれに習い、ダンテ,ペトラルカ,タッソらが、その時代第一流の詩人として月桂冠を戴いきましたが、とりわけペトラルカはローマ元老院から「桂冠詩人」の称号を与えられます。
ラッファエロ画
月桂冠をかむる、イタリア古典文学最大の詩人、ダンテ・アリギエーリ。
アポロンは光の神だけでなく詩神でもありました。
17世紀以降の近代イギリスはこの習慣を国家の制度とし、イギリスでは王家が桂冠詩人(英語: イギリスの、ポエット・ローリイット)を任命、称号を与えるようになりました。 役割には特定の任務は伴いませんが、重要な国の行事のために詩を書くことが期待される、名誉的地位で、17世紀初頭から現在に至るまでに20人の桂冠詩人が指名されています。報酬は10年分の年金と数百本のシェリー酒だとか。
イギリスの歴代のpoet laureateはこちらでご覧ください。
現在、20代目のポエット・ローリイットCarol Ann Duffy キャロル・アン・ダフィー。
400年の歴史のポエット・ローリイットのなかで唯一の女性。初のスコットランド出身で初の同性愛者。グラスゴーの貧民街出身。1999年の選考にも候補に上がりますが、2009年からポエット・ローリイットになります。
優しいけど強く、叙情的でありながらユーモアのある彼女の詩の幾つかはスコティッシュ・ライブラリーのこのサイトでご覧いただけます。
http://www.scottishpoetrylibrary.org.uk/poetry/poets/carol-ann-duffy
ちなみに、ローリエはラテン語で laurus または laurĕaと言い、 現代イタリア語のLaurea(学位の意味)は laurĕaを語源としているため、イタリアの大学やフランスでも大学医学部などは卒業の際に月桂冠をかむる習慣が未だに残っています。
大学卒業式用の月桂冠
イタリアお花屋さんのHPから