2017年8月3日木曜日

バカラ カプリ BACCARAT CAPRI

2017年8月30日更新


バカラのカプリは「19世紀にインドのバローダ藩国王妃のためにデザインされたもの」という記述をあちこちで見かけます。疑り深い性格なのでウエッブショップの商品紹介ではなくもう少し信頼できる出典を探したのですが見つけられませんでした。でも、日本語だけでなく英語、伊語、仏語でも同じ内容を見かけますので根拠のある話なのでしょう。

プロパー品としては1981年リリース、、、と書きましたが1975年のカタログに掲載されているのを見つけましたのでそれ以前ということになります。最近製造が終了したようです。30年以上継続したロングセラーの人気品でした。女性的で流麗なフォルムが魅力的。長く使っても飽きのこないタイムレスな佳品です。


今回入手した品は新しいバカラマークがありバカラのロゴの入る前の品なので1980年代製造です。当ギャラリーでは主に20世紀前半の品を扱っているのですが例外的に6客限定で入手しました。。オリジナルの箱もありますが、6客用の輸送用梱包で、ギフトボックスではありません。



1975年のカタログページ

インドのバローダ藩国の宮殿


名前の由来:
カプリといえばイタリア南部のティレニア海にあるカプリ島(Isola di Capri)。
ナポリ市街からナポリ湾を挟んで南へ約30kmに位置します。
MAP

風光明媚な土地として、古代ローマ時代から知られていますし有名な観光地でもあります。青の洞窟と呼ばれる神秘的な青色を放つ海食洞がつとに有名。古代ローマ皇帝ティベリウスが統治期間の後半を過ごしたことでも知られています。

この島は元々はテレボアイ人が住んでいた島でしたが、のちに古代ローマ皇帝アウグストゥスが気に入り別荘地として島全体と対岸の土地を購入したとのこと。アウグストゥス自身は利用する機会に恵まれず、その後を継いだティベリウスは西暦26年からこの島に居を移し、隠棲しながら政務を行ないました。ティベリウスは島内に12の別荘を持っていたとされ、そのなかでも「イオの別荘」(Villa Jovis)は有名です。

Villa Jovis

また、島の周囲にはファラリョーニと言う奇岩が存在し、これに近づくため島を周遊する観光船が運行されています。
世界中から観光客の押し寄せる著名観光地なので島の中心の広場周辺は有名ブランドブティック、高級ホテルやレストランもならんでいます。

ファラリョーニ  Photo©Elenagm


カプリ島内の道

旅行者にとって島の最大の観光スポットは青の洞窟(Grotta Azzurra)は内側に入ると外からは予想もできない数十メートルの広大な空間が広がり、水中に伸びている穴を通して水面から洞窟全体が神秘的な紺碧の光を帯びています。
アンデルセンの『即興詩人』では、この洞窟が重要な舞台となっています。森鴎外の翻訳では、「琅玕洞」(ろうかんどう、琅玕=翡翠のこと)と訳されています。

青の洞窟 (Grotta Azzurra) Photo ©Elenagm


短期旅行者が楽しめる観光はその程度ですが、行ってみてこの島の本当の魅力は島に点在する別荘に滞在することだろうと思いました。もちろん別荘のオーナーに知り合いがいて招待してもらわないといけませんが。。。
特に島の高台を中心として、各界著名人の別荘が点在していて、その多くが「イオの別荘」に習ってか海を挑む断崖絶壁の上に建てられ、観光客の人混みとは無縁に、孤立した素晴らしい自然の中にあります。

中でも有名なのは文筆家クルツィオ・マラパルテ自身が考案し、1938年から設建設を始めたマラパルテ邸(Casa MalaparteまたはVilla  Malaparte)は今でも多くの人から「世界で最も美しい家」と言われています。設計はイタリアのモダニズム建築家アダベルト・リーベラにも依頼されますが、マラパルテが実際に建てたものとリーベラが残している図面とは大きく異なっているため、マラパルテ自身が大部分を設計したという説が依然として有力で未だに論争中。内装は有名画家なジョルジョ・デ・キリコの弟でやはり画家アルベルト・サヴィニオAlberto Savinio)が担当したと言われています。

マラパルテ存命中は多くの知識人、文化人がこの家に集まったそうです。

「世界で最も美しい家」などと書くと建築関係者から他にもっと美しい家があると異議抗議が来そうですが、建築自体云々ではなく、素晴らしい自然の中のロケーションとそのロケーションを最大に活かした建物という意味、と私は解釈しています。


海から見上げるマラパルテ邸 2010年にカプリに行った時の写真です。


クルツィオ・マラパルテ(Curzio Malaparte)はペンネーム
本名はクルト・エーリッヒ・スクケルト (Kurt Erich Suckert)
父親はドイツ人、母親は北イタリア出身

この家は一時期だけですが文化財団が所有した時期があり、その期間も一般公開はしていませんでしたが、クリエーターであれば滞在して、滞在期間中制作した作品を寄贈するという方法で訪問滞在が可能でした。
現在は個人所有のため一般には公開していないので内部を見ることはできません。
あの時立候補すればよかった、と後悔しても後の祭りです。。。

ただ、フランス ヌーベルバーグの巨匠ゴダール監督の映画「軽蔑」(1963年 原作はイタリアのアルベルト・モラビア)では後半、このマラパルテ邸が舞台になっているため、映画を通して内部や周辺の様子をうかがうことができます。絶景を額縁に入れたような大きな窓が特に印象的です。
平面レイアウトで見るとこ最上階の入って直ぐに、下の写真で見られるサロンがあり、左右に大きく4つの窓があり海と崖を挑めます。海を正面に見る一番奥の部屋は書斎、その手前の書斎とサロンの間、右がマラパルテの寝室、左手は主賓室になっています。下層階にさらに客用寝室が4部屋あります。


マラパルテ邸内部・左右に絶景を額縁に入れたような窓 J-L.ゴダール「軽蔑」より

マラパルテ邸内部・炎の向こう側に海が見える暖炉 J-L.ゴダール「軽蔑」より


マラパルテ邸・屋上に上がる階段 J-L.ゴダール「軽蔑」より

マラパルテ邸 図面 http://www.archidiap.com/opera/casa-malaparte/より