2018年9月4日火曜日

ポートワイン(デザートワイン)グラスの使い方 Verres à vin de Porto


ポートワイングラス。
満水容量80mlくらいの小さなグラスのことをフランスではこう呼ぶのが一般的なようです。
満水で80mlですからリキュールにはやや大きすぎ白ワインには小さ過ぎ。

アールデコ期のショートステム、ノーステムですと日本酒の冷酒向けにお求めになる方が大半だと思います。

一方ロングステムのグラスの場合、どのように使っていいのか判らないという方も少なくないのでは、と思います。





私の住んでるイタリアではこのサイズのグラスは食事の最後のチーズか食後のお菓子に合わせていただく甘味の強くアルコール度の高いワインに使用されるのが一般的で、以前は勝手にイタリア語のVino da Dessert (デザート用のワイン)からデザートワイングラスと呼んでいました。
おつまみを食べながらお酒を延々呑み続ける日本ではデザートワインというのはあまり親しみがないかもしれません。

このサイズのグラスはフランスだとポートワイン用、食前酒用、たまに食後酒用などと言われて売られていて、ますます混乱してしまいます。
タリアではポートワインは食後酒としていただき、食前に飲むことはまずありません。

そこでフランス映画で少しお勉強してみました。





写真は映画「ブルジョワジーの密かな愉しみ」(Le charme discret de la bourgeoisie ルイス・ブニュエル監督 1972年)陸軍大佐宅のディナー着席前の立食で食前酒を飲む場面で主人公の一人が「ポートワインをワンフィンガー」と注文します。濃い紫色のワンピースを着ている女性が持っているのがポートワイングラスです。
この場面でポートワインを食前酒として飲むこともあるんだ、と目鱗でした。
地理的にこんなに近くても食文化やそれに伴う小道具の用途も随分異なるのですね。


それから映画「ムリュエル」(アラン・レネ監督 1963年)では

長い間会っていなかった昔の恋人を家に招待するシーンでやはりディナー着席前に居間で食前酒をサービズする場面。ワゴンには数種の食前酒が乗っています。ラベルが読み取れるのはチンザノだけですが、なるほどマルティーニやチンザノ、ズッカなどならこのサイズのグラスで飲むのも良いかもしれません。
マルティーニやチンザノの発祥地イタリアでは、普通もっと素っ気ないグラスで飲みますが。。。






この映画、Boulogna sur Mer というフランス北西の港町が舞台です。インテリアを見ると極めて庶民的な住環境ですが男性が昔の恋人に「 君は昔と変わらないね。クリスタル僕も大好きだ。」と彼女がテーブルにセッティングしたワイングラスを褒め、指で弾いて響きを楽しむ場面があります。暮らしのクオリティーにクリスタルのテーブルウエェアはとても大切なことがわかります。




ちなみにこのサイズのグラスに良いワイン。ポートワインはもちろん、イタリアワインならPassito(パッシート)やフランスのSauternes(ソーテルヌ)など、甘みとアルコール度がやや高いワインが良いでしょう。

日本人のお酒好きは往々にして「甘い酒なんて飲まない」とおっしゃる方が多いですが、この種の甘めのワインは決してお酒の苦手な女性向きに甘くしてある邪道なワインではなく、ワイン通の甘さです。コーディネートする食材によっては素晴らしいハーモニーになるので是非機会のあるときにお試しください。





左はソーテルヌ
右は大好きなHauer のパッシート。シチリア州のリパリ島で作られています。


Photo: Franco di Filippo
パッシートワインの葡萄はこのくらいになるまで収穫を待ちます。


さて、ポートワインについてですが、イタリアのパッシートワインが葡萄を干からびるとまでいかなくても、しおれるまで収穫を待つ以外、その後の清酒工程は普通のワインと変わらないの比べ、ポートワインは糖分が残っている発酵途中にアルコール度数77度のブランデーを加えて酵母の働きを止めるのが特徴だそうです。


その昔フランスと戦争が多かったイギリスが美味しいワインをフランスから輸入できず、ポルトガルから購入するにあたり、長時間船に揺られても味の落ちないワインとして開発されたのだのだそうです。


大分前ですが、ポートワインの本場ポルトに行ったことがあります。町の中心部から川を挟んだ対岸にワイナリーがたくさんあって試飲させてくれます。毎日午後になると試飲のためワイナリー巡りをしました。色々試飲した中で私的に一番気に入ったのはQUINTA DO NOVALキンタ・ド・ノバルのヴィンテージワインでした。ヴィンテージは毎年製造されるのではなく、特に葡萄の質が良かった年にのみつくられるのだそう。

そのときはヴィンテージボトルを1本買ってきて何年後かのお誕生日に開けていただきました。余談ですが、その翌年の誕生日の数日前にアパートの地下のセラーに泥棒が入りセラーに蓄えていた高級ワイン各種全て盗まれてしまいました。楽しみは後に、なんて言ってないで全部飲んでおけばよかった、、、と後悔。。。。その後は出来るだけ早めに開栓する口実を見つけるようにしています。

QUINTA DO NOVALキンタ・ド・ノバルのポートワイン

Photo: Paula Santos
ポルトの街