Photo©Patrick Schuttler
Courtesy: Baccarat
パリゾン( PARAISON)のセットは、1933年にインドールのマハラジャがマニック・バグにあったアールデコ様式の宮殿のために注文したもの。
インドールの最後のマハラジャはヤシュワント・ラーオ・ホールカル2世で1926年から1947年までインドールの藩王だったので、発注主はヤシュワント・ラーオ・ホールカル2世と言って良いでしょう。
意匠的には、1933年のリリースで、ローハンのリリースから3年しか経っていない事、ミケランジェロを代表するアラベスク模様のエッチングを施したグラスが全盛期だった時のリリースである事を考慮すると、かなり斬新で未来的なデザインだったと言えます。またシュバリエの常に先を見る目が垣間見られる逸品です。
Photo©Patrick Schuttler
Courtesy: Baccarat
実物を入手した訳ではないのですが、以前バカラのプレスオフィスから頂いた写真でブログページを加えることにしました。
名前の由来
ローマ字読みにするとパライゾン( PARAISON)と呼んでしまいそうですが、「パリゾン」と表記するのがフランス語の発音に最も近いと思います。
「パリゾン」はフランス語で、2つの意味があります。
ひとつは、成形(特に吹き成形)のために準備されたガラスまたはプラスチックの塊の意味。
もうひとつは、その塊を丸く成形する実際の操作を指します。この用語は、「ガラスの塊」、つまり丸く成形してその後の加工に備える工程、あるいはこの工程の結果を指します。
ガラス製造において
操作を指す場合:
パラゾンとは、溶融ガラスの塊をパイプで操作し、丸く滑らかにする操作です。
工程を指す場合:
パラゾンとは、このようにして準備された溶融ガラスの塊自体を指す事もあり、吹き成形または最終製品への加工の準備が整得えた状態を指す事もあります。
ちなみにプラスチックの成形方法にはあまり詳しくないのですが、ブロー成形によってプラスチック製品を製造する場合、パラゾンとは、圧縮空気を注入する中空の端部を持つプラスチックチューブを指すそうす。これが金型内で膨張し、製品の最終形状を形成します。
以下の3つの画像はムラーノグラス(ベネツィアングラス)のプロモーション団体「Consorzio Promo Vetro Murano」のプロモーションビデオから拝借しています。バカラの工場風景ではありません。
ガラスが溶解された窯からパイプでガラスの塊を取り出す作業
取り出したガラスの塊を作業台に移す
フランス語ではこのガラスの塊をパリゾンと言うのですね。
バカラの製品の大半は型吹きなので型に入れて吹きます。
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このモデルに何故技術的な専門用語の名前が付けられたのかについてですが、オリジナルの写真が見つけられないのですが、以前何かの本でこのモデルの特徴となっている金属部分は、ガラスを成形する際に使用する持具に似せて、意匠化しているのがわかる様な文献を見たことがあります。
正確に記憶はないのですが、そのためにパリゾンなどという技術的な専門用語のネーミングがなされたのだと推察します。