TALMAタルマと名のつくモデルは同型で別のデコレーションの物もあり、1930年のカタログによると899がデコレーションの品番になります。
このグラビュールのデコレーションはサンルイの1908年のカタログにも確認出来ますが、ロングステムで全て揃ったセットは1930年のカタログに登場します。
最近ヨーロッパのebayやヤフオクで、この899エッチングの品を巧みな偽口実でBACCARAT製品と偽って出品するセラーを頻繁に見かけますが、これは20世紀初頭のサンルイのオリジナルのエッチングです。
クリスタルメーカーとしてはサン・ルイはバカラより老舗ですし、私の考えでは品質的にサン・ルイはバカラに全く劣らないと思います。また、このエッチングは同時期のバカラ製品同様美しいと思うので、嘘をつく必要等はなく胸を張ってサン・ルイだと言えると思いますが、ヤフオクだと変にバカラ編重傾向にあるためでしょうか。何れにしても入札者の立場では、バカラと言われて買ったものが別のメーカーの品だったというのは不愉快でしょうし、売り易いからとメーカー名を偽るのは詐欺と大差なくモラルに反すると思います。
因に、このタイプのエッチング技術をバカラが採用したのは1864年ですが、サンルイが製品に取り入れたのは1870年。
モチーフとしてはサンルイの1900年初頭 のスタイルです。
バカラ、サン・ルイ、ヴァル・サン・ランベール合併期間は3社の歴史を読んでも各自、自社のことしか書かず、少し判り難いので、この機会に纏めておきます。
サン・ルイとヴァル・サン・ランベールが合併されたのは1802年。1806年に一度倒産したバカラはその後も炉を守り、1816年にサン・ルイと合併します。
ヴァル・サン・ランベールが再び単独のベルギーの有限会社となったのは1826年。
サン・ルイが単独の株式会社として独立するのは1829年。
その2年後1831年からサン・ルイとバカラは流通面等での提携をし、そのジョイント・ヴェンチャーが完全に終了するのは1857年のことです。
バカラとサン・ルイだけみると長い二社の歴史の中で10年あまりの合併期間は非常に短い様に思えますが、バカラはその間にクリスタルの重要なノウハウをサン・ルイ、ヴァル・サン・ランベールから獲得することになり、最初のクリスタルの炉をバカラが開くのは合併した年の11月になります。
TALMAというのは人物名でフランスまたはオランダの苗字です。(フランスにタルマという町もありますが地名のタルマはTALMASと最後にSが入ります。)著名人も複数いるので誰に因んだんかは不明ですが、このモデルが出来る前の有名人では18-19世紀の舞台俳優フランソワ=ジョゼフ・タルマ(François Joseph Talma1763-1826)がいますし、「コインの女王」と異名をとった手品師マリー・アン・フォード(1861–1944)の芸名もTALMAでした。
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アンティークSt. Louis サンルイTALMA899 ワイングラスS
直径5.2cm H 11.5cm
(サンルイマーク無し1935年以前製造)
満水容量 90ml
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直径5.2cm H 11.5cm
(サンルイマーク無し1935年以前製造)
満水容量 90ml
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アンティークSt. Louis サンルイTALMA899 ワイングラスM
直径5.6cm H 12.6cm
(サンルイマーク無し1935年以前製造)
満水容量 120ml
直径5.6cm H 12.6cm
(サンルイマーク無し1935年以前製造)
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満水容量 160ml
満水容量280ml
©Galleria Kajorica
アンティークSt. Louis サンルイTALMA899 シャンパンクープグラス
直径9.2cm H 10.8cm
(サンルイマーク無し1935年以前製造)
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©Galleria Kajorica
アンティークSt. Louis サンルイTALMA899ゴブレットL
直径7.3cm H 16.2cm
(サンルイマーク無し1935年以前製造)
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18-19世紀に活躍した名優 フランソワ=ジョゼフ・タルマ
手品師TALMAとそのポスター